第9話

クリスに見られながらも私は素振りを始めた。


とりあえずは体力を付ける事と自分の限界を知らなければいけない。


素振りが100回になる頃には汗をかいて、息が上がってきた。

200回を超えると腕が段々と上らなくなってきた。

300回に届いた所で完全に腕が上らなくなった。


今の私では300回が限界の様だ。

少し休み、水分補給をしっかりと行う。


仮眠を取った後に腕の具合を確かめる。

少し動く様になった。


次は近くにあった立派な木に向かって正拳突きと蹴りを繰り返す。

正拳突きは100回にも満たない程度しか行えなかった。

蹴りに関しては100回を超えた辺りで辞めていた。

歩けなくなってはいけないから程々に。


終わった後にクリスの方を見ると驚いた顔をしていた。

何か驚く様な事をしただろうか?


「いつもこんな事をやっているんですか?」


「今日からずっと熟していき、夜は魔力の修練に充てるつもりです」


更に驚いた顔をして、何かを呟くと光が溢れて私の怪我を治していった。


「私にはこれくらいしか出来ませんが無理はなさらぬ様にしてください」


「ありがとうございます。これで更に修練が出来る」


クリスは溜息をつき、私の修練をずっと眺めていた。

夜の魔力の操作や感知を始める前に疑問に思っていた事を聞いてみるとしようか。


「クリスさん、貴方に聞きたい事があります」


「はい、何でしょうか?」


「貴方は悪い人ではないですがただの人とも思えない。


貴方は一体何者ですか?」


「…どういう意味ですか?」


「貴方は私を発見した際にこんな辺鄙な所と言った。

つまりここはあまり人が立ち入らない場所なのでしょう?


そんな所に貴方の様な女性が一体何の用で来たのですか?」


「私はただ道に迷っただけでして…」


「それはあり得ない。


道に迷ったとしたら貴方は結構な時間歩いた事になる。

ならば当然服に小さな破れや靴に土等の汚れがしっかり残っていなければおかしい。


ここに来た時の貴方はあまりにも身綺麗過ぎるのですよ。

他に反論はありますか?」


「レイジさんはなかなか鋭いですね、お見事です。


貴方の様子を見に来たのですよ、この子の身体を少しだけ借りて」


やはりあの神様に関する者だったか。

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