第21話 お正月
第21話 お正月
クリスマス明けに花菱の本社において世界的な重大発表が行われた。
重力の解明、および反重力装置の発明。その発表は大成功だった。花菱の株価は爆上がりとなり、俺の資産も日本円だけで50兆円を超えた。
・・・まあ、悪魔の俺には金などいくらあっても意味がないがな
金とは自分の望みを叶えるための糧。だが、俺は膨大な魔力でその望みを自由に叶えることができる。なので金など本来は必要はない。
とは言っても世界の人口は80億を超える。全てを俺の眷属にするのも苦労するし事実上不可能だ。ならば金で俺のことを崇めさせるのが手っ取り早い。
現在、地球は小氷河期に入りつつある。十年前までは地球温暖化だSDGsだとか言っていたが現状それどころではない。寒冷化による食物不足は慢性的になりつつあり食品の値段はうなぎのぼり。
とりあえず俺の金で財団を作り世界各地で食糧生産の拠点を作ることにした。巨大な食糧生産工場の建設だ。
1キロ四方で高さが百メートルの食糧生産ビルを世界に1万ヵ所建設する予定だ。ワンフロアが高さ八メートルの十階建てで、それぞれの階で小麦、米、野菜の生産を行う。最上階は畜産フロアでニワトリ、牛、豚を飼う。
実はこの計画はすでに夏ごろから始まっていて、問題は資金のみということだったのだ。が今回、件の発明で資金の目処がついたということだ。
エネルギーに関しても反重力技術により、より安価な核融合発電が実現される。
さらに反重力技術のお披露目では宇宙進出についても言及された。火星への本格的な植民計画。これはかなり先の話ではあるが実現が容易になり本格的に計画が進められることになったのだ。
・・・俺としては火星などより異世界へのゲートを開き並行世界の一つにでも行ったほうが早いと思うのだがな
魔界であるアークランドに他にも知ってるだけで14もの人が暮らすに適した異世界があったのを思い出す。
かつてはメリダ、ベルフェゴール、ベルゼブブとともに冒険者として訪れた世界。いずれも地球の中世とよく似た世界であった。
魔物も少なく暮らしやすかったが人間同士、国同士のいざこざが多く俺自身が王となり平定した世界もあった。
・・・この異世界の存在のことは俺にとっての最後の切り札。なのでまだ黙っていた方が得策だな
全てのプロジェクトは花菱の元で進められる。今や国家より一つの企業が世界を支配する時代が来たということだ。そしてその花菱を実質的に支配しているのは俺。つまり俺が世界の覇者として一番近いところにいるというわけだ。
少しにやけてしまう俺が今ここにいる。そんな将来のことを夢想していると寝室のドアがノックされた。
「ユリカ、起きなさいよ! 今日は初詣に行く予定でしょ、早く着替えるわよ」
元ユリカの声だった。今はアトレリア公国の正式な王女となったので名前をシルフィエットと変えることとなった。本人には長いのでシルフィと呼んでと言われている。
にしてもまだ朝の5時半。早すぎないか。
寝室に入ってきたシルフィはすでに振袖の着物に着替えていた。明るいピンクに藤の花。金色の髪はアップに纏められ可愛らしくも実に美しい。少女から大人になる一瞬の儚さも感じさせられる。見惚れていると部屋から連れ出され芽衣の待つドレスルームに連れて行かれた。
着物に着替えること1時間。
姿見に映る振袖姿の自分自身に言葉を失うほどだった。
薄い紫の地に華やかな蝶が舞う。まだ真冬だというのにそこは春先の穏やかな世界。それが俺が着ている振袖。長い銀髪はアップに纏められているが一部を耳の横にウェーブかけて垂らしている。これが実に良い。可愛らしさと美しさの融合。もっと姿見で自分の姿を見ていたかったがすぐにどかされた。次はアリアの番だと。
バンパアイアのアリアは年越しパーティーを終えたばかりで寝ていないのか、かなり眠そうだ。目をこすりながらドレスルームに入ってきた。
「大丈夫なのアリア。無理しなくても」
俺が心配して声をかけると、
「大丈夫よ。今日はあいにくの曇り。一時雪の予想よ。そもそも冬の太陽の日差しは弱いのでそれほど問題でないわ」
何か勘違いして答えてくれた。まあバンパイアは元々三日位徹夜しても問題ない種族なのでもう心配するのは無駄だと納得する。
そしてリビングで待つこと小一時間。アリアの着物姿にまたまた見惚れてしまう。
明るいオレンジに色とりどりの花や木々。花菖蒲に蓮の花。ちょっと仏教画みたいだけど下地の色のせいか華やかさが半端ない。
髪は俺とお揃いでまるで双子だ。まあ顔つきだけなら元ユリカ、今はシルフィと同じなので三つ子か。
そこで少し心配が。
「これだけ美人が三人もいると初詣で目立つのではないかな?」
特に俺とアリアは有名人だし。と思っていると、リビングに待機していたメリダが、
「問題ないわ。ちゃんと認識阻害の魔法をかけますからね。周りの人には美しい着物しか記憶に残らないはずですよ。思い残すことなく初詣に行ってください」
それを聞いて少し安心。にしても思い残すことなくなど不吉な。俺はこの体の寿命が来るまでは毎年、初詣に行く予定だぞ。
その後、田町詩織、三島遥香とも合流する。そこには一緒にララもいた。もちろん三人とも着物姿。実は着付けの関係で詩織とララは遥香の本邸で着替えてもらったのだ。先日、遥香の家は火災で消失したかと思っていたのだが、あれは遥香姉妹のための勉強用の家だったとのこと。5億はくだらないタワマンロフトの家が勉強部屋だとか、やはり浮世離れしている家族だ。
そして俺は詩織たちの着物姿にしばしまた見惚れる。
詩織と遥香はいかにも日本人の和装という形で清楚で美しい。ララは俺たちと同じで派手で美しい。それぞれの美しさを褒め称え話が弾む。メリダの時間との言葉に我に返り初詣に出発。
俺たちを乗せたミニバンは小一時間走り目黒近くの荒幅木大社に到着。都内では明治神宮に次ぐ参拝スポットだ。
・・・ちょっと冷えるな 天気があまり良くないせいかな
寒さに少し身震いする。朝のニュースでは今日の気温は10度前後だったはずだ。この時期にしては普通で極端に寒いわけではない。が、着物はそれほど保温性が高いとは言えない。暖かのキャミソールを着てはいるがショーツはTバックだ。芽衣によると着物の時はこれが常識でパンティラインを見せないためだとか。こんなヒモみたいなものつけてどうするのだ。これなら履いてない方がマシなんじゃないかと思う。Tバックのことを三島遥香に漏らすと、「私、最初から何もつけてないわよ」と返された。伝統的には何もつけなくても良いそうだ。
寒さに手提げポーチから薄手のショールを出す。メリダがこんな時のためと朝、渡していてくれたものだ。かなりコンパクトだが羽織ると保温性が良いのかあまり寒くない。が、少し着物の柄が隠れてしまう。俺としてはせっかくの美しい着物を見せびらかしたい欲求はあるのだが、やはり体が大事だ。いくら大魔王だからといってもこの体は普通の人間だ。ま、少しバンパイアの血が混じっているらしいが。なので寒いものは寒い。みんなも寒いのかメリダから渡されたショールを羽織る。お揃いのピンクでこれはこれで連帯意識ができて良いものだ。
すでに午前九時を回っているせいか人の流れは順調だ。
認識阻害の魔法のせいか俺たちの正体に気づくものはいない。
列に並んでいる間も俺たちはおしゃべりに夢中。あの魔法少女のことで盛り上がる。
「それにしても新学期、絶対に注目の的よね。これでユリカも来期はエトワール確実よね」
田町詩織のミーハーは平常運転。そこにララが、
「それよりも魔法少女ナイトメア。ニュースで実写版の制作決まったらしいわよ」
ララもこちらの世界に来てまださほど経っていないのにアニオタ、魔法少女オタになってしまったようだ。
本物の魔法少女が現れたことで世間の関心が高まったことを受け実写版も今年の秋には制作されることも決定したようだ。そして詩織とララの間で誰がどの役をやるかで議論が紛糾。アイドルが良いのか若手の俳優が良いのか。
そんな話は置いといて俺とアリア、そして三島遥香は元ユリカ、今はシルフィとなった次期アトレリア女王のことで話題もちきり。
「やっぱり女王教育ってあるのかしら? きつかったら私が代わってあげるわ。金髪に染めてブルーのコンタクト入れると多分見分けつかないから。ちょっと本物の女王様気分味わってみたいの」
アリアの言葉に不思議がるシルフィ。
「アリアだってバンパアイアの女王様よね。変なことを聞くわね」
「女王というより大統領と言った方が適切ね。宮殿もないし華やかな行事や式典もないし。実質的な執務をする毎日って感じで決して女王様じゃないわ」
「そうなの。でもようやく領地もできたことだし、ほら例のバンパイアバンド。そこに宮殿作れば良いじゃない。資金はユリカがたっぷり出してくれるはずよ」
俺に振るシルフィ。確かに俺は超資産家だ。その資産もアリアのおかげであることも十分に承知している。ちょっとは考えてみようかと思う。
そこに田町詩織が興味深げに話を割って入ってくる。詩織はロマンチストであり、かつオタク。最近は自分の書いたラノベが投稿サイトで評判を得ていて近々書籍化の話もあるという。
「宮殿か。それってロマンの塊よね。私の小説に出てくる月華宮殿作って欲しいわ。白磁の聖堂に聳え立つ巨塔。そう超本格的なの。きっと観光名所にもなるわ。ねぇ、ユリカにとっても損はない話よ!」
半分以上私利私欲じゃないかと思うがまんざら悪くないとも思う。
「まあ、そんなことなら資金提供もやぶさかではないよ」
俺の言葉に満面の笑みを浮かべるアリア。とても可愛い。俺と同じ顔だがな。
そんなこんなで1時間ほどで拝殿にたどり着く。
何を祈ろうか。やはりみんなの無病息災。家内安全か。でもありきたりだな。ここは一つこの世界を全て俺の手中に収められますようにと祈ろう。
二拍二礼一拍手。作法に従い祈りを捧げる。
・・・どうか、この俺が世界の支配者となれますように
今まで数々の異世界で覇道をなしてきた俺にはごく当たり前の祈り、が、ここで異変が。
「キャー、なんでこんなことするの!」
「信じられない! マジ腹が立つ!」
「嘘でしょ。せっかくの晴れ着が!」
振り返るとあちこちから女性の叫び声と怒声が聞こえてくる。
何事かと辺りを見回すがよくわからない。すると、
「えっ、嘘。私の着物が切られている!」
田町詩織の振袖の一部が切り裂かれていることが発覚。
さらにララの着物の振袖部分にも切り裂かれた跡が。
すぐに俺たちは自分の着物を互いにチェックしあう。
どうやら被害は詩織とララだけのようだ。
にしても酷いことをする。
三島遥香が、
「どうやら着物の切り裂き魔ね。去年の成人式でも全国で話題になっていたから模倣犯かも」
愉快犯か着物に恨みを持ったものの犯行か。だが今、それは問題ではない。遠くから悲鳴が続けて聞こえる。どうやらまだ犯人は凶行中のようである。とりあえず悲鳴が聞こえる方向に進む。
ごった返す境内なのでなかなか犯人に近づくこともできない。刃物を持っているのでこのままでは非常に危険だ。いつ怪我人が出てもおかしくない。
近くにいた警備員に詩織とララの切られた着物を見せ、警察に連絡を入れてもらうことにした。もちろん腹が立つので俺たち自身でも犯人探しを継続。そしてこちらには勝算がある。
なんと行っても俺たちは魔界の盟主であり、そしてその眷属達だ。普通の人間ではない。犯人を特定することは簡単である。
俺は魔法通信で駐車場で待機するメリダに事の詳細を説明し、協力を仰ぐ。メリダの能力には興奮状態にある人間を探知できるものもある。そしてその能力は俺の意識とリンクさせることができるのだ。
俺は飛翔魔法でそっと宙に浮かび上がる。詩織、ララ、シルフィ、アリアが俺の周りを取り囲み認識阻害の結界を発動させているので俺が宙に浮いていることは周りからはわからないはずだ。
絶対に捕まえてやる。犯人には俺たちをコケにしたことを後悔させてやらなければならない。
メリダの意識とリンクして上空から興奮状態の人間を探す。興奮していれば体が赤く発光しているはずだ。
いた! がどうやら違ったようだ。カップルで参拝後のエッチを考えているらしくそれで興奮状態。羨ましい。が、除外だ。
しばらく浮遊しているとまた赤い発光が。今度は忙しなく人の間を縫って移動している。そしてその赤い発光の後に悲鳴が。間違いない。犯人だ!
犯人は初詣には違和感のあるフロッグコートにハンチングハット。魔法通信で仲間にそれを伝える。
「すぐに捕まえないと怪我人が出そう。私ひとりで行くわ!」
仲間に伝えると認識阻害の結界を抜け犯人の真上までいっきに飛翔する。刃物を持っているのかキラリと手元が光る。
また犯行に及ぶようだ。これはマズい!
俺は急降下して犯人を後ろから抱える。
捕まえた!
そして両腕を後ろから抱えたまま上空に飛翔。
あれ、えらく軽いな。成人男性をイメージしていたため犯人の軽さに驚く。犯人は抱えられたままジタバタと暴れる。元々のユリカの体力では落としかねない。そこで電撃魔法。スタンガンと一緒だ。
バリバリバリッ
どうやら気絶したのか動きが止まる。そして犯人を境内の外れの御神木の根元におろす。顔を隠していたマスクを外しその顔を見る。
女じゃないか! 駆けつけてきた仲間達も犯人の顔を見てちょっとびっくりしたようだ。年齢は30前後でそれほど若くもなさそう。化粧っけもないがそれなりの美人だ。なんでこんな犯行に及んだのか理解に苦しむ。
とりあえず俺は自分のスマホを犯人のコートの風貌に放り込む。
俺の行動に詩織とララは不思議そうな顔をするが遥香とシルフィ、それにアリアにはその意味がわかったようだ。
近くにいた別の警備員に事の次第を告げる。と、どうやらその警備員も事件のことをすでに知っていたようで間も無く警察が駐車場に到着するとのこと。
「一件落着ね。それよりユリカ。結界を飛び出したけど大丈夫だったのかしら?」
アリアの指摘にちょっと動揺する俺。認識阻害の結界を思わず飛び出してしまったが、やむを得なかった。怪我人が出てからでは遅いからな。ま、おそらく大丈夫だろう。何かあってもなんとかなるさ。俺は楽観主義者だ。
その後、俺たちは最寄りの警察署で事情聴取を受けることとなった。お正月なのでできるだけ簡潔にと1時間もかからず聴取は終わった。
詩織とララが被害届を出すことで事件は成立。犯人の素性についてはこれから取り調べとなるそうだがとりあえず一件落着となる。
もう一つ大事なことが残っていた。俺が犯人のフードにスマホを入れた理由。
警察でも説明したが、これは犯人確保がなぜできたかという理由づけだ。まさか魔法で犯人を見つけましたとは言えない。なので詩織とララが犯行にあった際に咄嗟に犯人のフードに俺のスマホを投げ入れたと説明した。フードなので犯人は気づかないかもと。
そしてスマホの位置情報を追って犯人を追い詰め確保したということにしたのだ。我ながらナイスアイデア。これには詩織とララも感心してくれた。シルフィやアリア、遥香は当然でしょと言った顔だったのがちょっと心外。
事情聴取が終わりスマホの時計を見るとすでに午後二時。どおりでお腹が空くわけだ。お正月なので行きつけの高級レストランとかは軒並みお休み。なので近くのファミレスに移動して遅めの昼食をとることにする。着物を着替えてからとも思ったがお腹の虫がグーグー。他のみんなも似たり寄ったりですぐに昼食だ。
国道沿いのファミレスは混んでいたが昼を過ぎたためかなんとか席を確保できた。コスパの良い日替わりランチを注文としようと思ったがお正月はやってないとのこと。
するとシルフィが、
「ユリカって意外とケチなのよね。買おうと思えばここのレストランチェーンなんて会社ごと余裕で買えるのに。なのに私に憑依していた時も食事は必要最低限。おかげで太らなくて済んだけど」
「魔界での食事とは生命維持が最大の目的ですからね。なので食事に質素も豪華もなかったわ。必要があれば牛一頭は難なくいただいてましたけど」
ララがそれを聴き、
「ほんと、魔王様の食欲は半端なかったわ。牛一頭どころかハイオークの丸焼き三頭を二日で食べ切った時はみんなドン引きでしたよ」
今もみんなドン引きだぞ、ララ。
結局、俺は手ごねハンバーグ定食とデザートにいちごのパフェを頼んだ。
注文も終えほっとしたのかここで尿意を催してきた。そういえば着物に着替えてからまだ一度もトイレに行っていない。朝食は水気のものは控えていたのだが警察署でお茶をたっぷり飲んでしまった。
・・・元ユリカからはあまり我慢すると膀胱炎になると脅されていたからな。ここは早めにトイレに行こう
決意したはいいが、着物なのでどうすれば良いのかわからない。事前に芽衣からはトイレはひとりでは無理だとだけ聞いていた。誰かに手伝ってもらうようにと。
メリダに目配せするが知らんぷり。どうやら今回の捕物に自分が一番貢献したのに蚊帳の外扱いだったことに怒っているようだ。
どうしよう、すると遥香と目が合う。どうやら察してくれたようだ。
「ユリカ、お花摘みですか。なら私が付き添いますね」
普通の女性用ではなくユニバーサルトイレの方に入る。ふたりで入るには普通の個室では狭すぎるとのこと。
トイレに入り遥香に尋ねる。
「よく私の窮地が分かりましたね」
「いえ、実は私も催していたのです。この後、交代で私もするのでやり方覚えてくださいね」
遥香に着物の裾を上に持ち上げられ俺は便器に通常とは逆向きに座らせられる。
「両方の着物の裾はしっかり上で自分の手で持っておいてね」
俺は今、着物の裾を両手で抱えてバンザイ状態。これから自分の手を使わずに小をすることとなる。
着物に塞がれ下の方の自分の大事な部分を触ることも見ることもできない。今、俺は本当にお手上げ状態だ。実際に手を挙げている意味でも。
恥ずかしさはそれだけではない。お尻が遥香に対して丸見え。そして、
「Tバックずらすのでそのまましてちょうだい」
どうやらTバックのショーツは脱がずにそのままズラして行うようだ。いっそ遥香のようにノーパンだったら問題なかったのかも。後悔先に立たず。
遥香の手に出たものがかからないかとちょっと心配になるが、もう限界だ。ジョージョーと股間から勢いよく出たものが飛んでいく。
「あっ!」
遥香の声が。危惧していたことが現実となる。どうやらかかってしまったようだ。後で謝らないと。
そしてトイレットペーパーをたぐる音が。
「今から拭くので動かないで」
トイレットペーパーを手にした遥香の手が俺の大事な部分に当たる。
「あっ!」
俺からも声が漏れる。
遥香は俺の眷属ではあるが女学院の憧れのエトワールでもある。そんな淑女に俺の大事な部分を拭かせるとか、うん、なんだか倒錯した気分になる。いけない女学生の午後の秘め事。実際にはそうではないのだが。その後、交代して春香のお花摘み。今度はすんなりとできた。お互いにスッキリした顔。が、心なしか紅潮している。
トイレから出てきた俺たちを見る仲間達の冷たい視線は永久にトラウマとなった。
夕方のニュースでは着物の切付け事件はトップニュースとなっていた。
すでに俺たちは花菱の屋敷で普段着に着替えくつろいでいる。
豪華なおせち料理をつつきながらテレビのニュースに見入る。
犯人は29歳のOL。なんでもクリスマスに彼氏に振られてむしゃくしゃしていたらしい。初詣に一緒に行く約束もチャラとなり、さらに自身の振袖の着物もその彼氏が持ち逃げして借金のかたに売ってしまったそうだ。
鬱憤を晴らすための犯行。
お正月ということもあり、他にこれといった事件もないのでやたら詳しく解説されている。事件系のコメンテーターもここが売り時とばかりに犯人に憎しの解説。
「でもなんかちょっと可哀想よね。減刑の嘆願書でも書きましょうか」
生真面目な遥香の提案に俺たちはうなづく。
そしてもう一つ困ったことが。
テレビの女性アナウンサーの言葉に俺たちは凍りつく。
「事件現場では空を飛ぶ着物姿の魔法少女も目撃されたとのことです。こちらが目撃者のスマホの映像になりますが、先のマンション火災事件の魔法少女とも似ているように感じられますね。犯人逮捕に何らかの協力があったのかは現在確認中です」
結界を飛び出した俺のミス。でも仕方なかったんだ。怪我人が出てからでは遅いからな。
今回の事態の収集はどうするか。メリダを見るが知らんぷり。
よほど怒っているようだ。今度ばかりは自分たちでどうにかするしかないか。
ようやくニュースが終わり復活した新春スターかくし芸大会が始まる。テレビにも飽きてきたころ、詩織が
「この後は新作のテレビゲームをしましょうよ。確かシルフィへのクリスマスプレゼント、出たばかりの「ララの魔女旅。魔王討伐編」でしたよね。私も監修しているので絶対面白いわよ」
「あ、それならこのリビングのテレビでもプレーできるわ。私の部屋にあるゲーム機とリンクしてあるので」
シルフィも乗り気である。
・・・その倒す魔王って俺のことなんだよな。ちょっと複雑
ゲームはきっと徹夜になるだろう。
そしてお正月の夜は静かに更けてゆく。
後書き
現実世界ももうすぐお正月ですね。魔法少女として覚醒した大魔王サタン。
女子高生と魔法少女と大魔王。すべてをちゃんとやっていけるのでしょうか。
Kindleにて他のTSライトノベル多数公開中!
「ぼくが読モでツンデレな件」「二度目の転生はハーフエルフでした」他たくさんあります。
こちらもよろしくね!
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