第4話 マンハント

 金。いつ動かすか。


『そろそろいいんじゃない、動かしても』


 待った。どうせなら、国外脱出用の船と航空機の手配が全て終わってからにしたい。


『手配は逃げてる間に終わるよ。はやくしないと』


「何が来るんだ?」


『いや、しらないけども』


 通信先。何か知っているような口ぶり。


 まあ、嘘ではないか。


「お前の言うとおりにしようか」


『人工知能に任せなさい』


「8人に繋げ」


 通信。切り替わる音。画面が出てきて、8人が映る。


「まず、自己紹介から。私はヘッドハントを生業にしている者だ。私の勧誘にのっていただいたこと、まずは感謝する」


 それぞれに、頷く。


「今回の私の目的はひとつ。この国と関連企業が行っているマネーロンダリングと融資先へのサイバー攻撃の事実を、公表すること」


 戦争をするよりも多くの犠牲が、サイバー空間を通して現実に出ている。


「あなたがたは、その事実を公表する証人になる。海を渡って私の依頼元の国に行っていただき、証言を行っていただく」


 大統領直々の依頼だった。平和主義もいいところだ。それは、平和主義と武力放棄を口にしながら大量虐殺を行うこの国にもいえる。


「あなたがたはまったく興味がないだろうが、次にあなたがたがこの国の土を踏むとき、そのとき、あなたがたは」


 そう。それが私の仕事。


「国を救った英雄となるだろう。それを望まない者には、相応の処置をとる。今言ってくれ」


 全員が、声を挙げた。


 やはり、誰一人として、栄誉を求める者はいない。この国の平和教育というのは、そんなに素晴らしいものなのか。


「わかった。ありがとう。あなたがたが目立つことのないように、こちらから依頼元へ通告しておく」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る