第29話第四回破滅フラグ回避会議
王城で、勲章を頂いた俺様達は実家に帰った。父ちゃんも母様も妹のベアトリスの凄い喜んでくれた。まあ、危なく胴と頭がさよならしそうだったんだから、当然の反応かもしれない。しかし、俺様とあーちゃんは喜んでばかりではいられなかった。そう、三人の求婚にどう答えるか? というか、どうやって結婚を回避するかという重大な破滅フラグ回避の作戦立案が早急に必要だった。
「クリス様、もうここは思い切って、女の子として幸せを掴んでは?」
「あーちゃん、もうめんどくさくなってきたんでしょ?」
「いや、決してそんな事は......」
あーちゃんの目が泳ぐ、間違いなく、めんどくさくなってきてるな!
「酷いよ。あーちゃん。俺様、男と恋愛なんて無理だよ」
「そうですか? 先日の幼馴染のアル様といい感じに思えたんですが?」
ギクッとする、あれは自分でもあやうかったと思った。信じられない事にアルにときめいてしまった。人生最大の汚点だ。思い出しただけで、頬が赤くなる。
「クリス様、その赤い林檎の様な頬っぺたをどう説明されるのですか? それに、その潤んだ瞳は・・・クリス様、とろけそうな顔ですよ」
冗談は止めてくれ! 俺様がアルに恋心を? 無い無い無ーい。絶対気の迷いだ!
「いや、あれはきっと、なんだ。気の迷いだよ。俺様、絶対男になんか興味ねぇ!」
「本当に困ったお嬢様です。幸せな結婚、すべての女の子の憧れじゃないですか? 王子様一人に勇者様二人・・・既に吟遊詩人がこの件を唄にしてましてよ」
「それにしてもどうしよう?」
「だから、三人の中から選んで頂ければ?」
「だから、全部嫌なの!」
「本当に困ったお嬢様」
さっきから、こんな感じだ。どうもあーちゃんは本格的に俺様に引導を渡す気らしい。つまり諦めて、嫁にいけという事らしい。酷いよあーちゃん、俺様の一番信頼できるブレーンが投げたら、俺様どうすればいい? そこに、突然、ドアをノックする音が聞こえた。ここは俺様の部屋だ。破滅フラグ回避会議はいつも俺様の部屋で行っている。防音の観点からここで行うしかない。しかし、誰だ?
「誰?」
「私、ベアトリスです」
俺様とあーちゃんは顔を見わせた。妹のベアトリスとは仲がいい。今でも一緒に寝たりする。愛らしいベアトリスを可愛がったおかげで、すっかり懐いている。一緒におねむも頻繫だ。今日も一緒に寝ようという事かな? と思ったが、事態は意外な方に話が進んで行く。
「ベアトリス、今、鍵をあけるね」
俺様はベアトリスを部屋へ招きいれた。
「では、私はここで、自室へ戻ります」
「まって下さい。アリシアさん。私も破滅フラグ回避会議に参加させてください!」
ベアトリスは衝撃の発言を言った。
「お姉ちゃん。私・・・ごめんなさい。何度かお姉ちゃんとアリシアさんとの会話を聞いてしまったんです。眠れなくてお姉ちゃんと一緒に寝てもらおうと思って、お姉ちゃんの部屋へ来た時、第三回破滅フラグ回避会議の話を聞いて・・・」
「ベアトリス、何処まで知っているの?」
「お姉ちゃんとアリシアさんが私の知らない世界から『転生』というもので来た事と、お姉ちゃんが男の人の記憶を持っているという事です」
ほとんど全部ばれてる。どうしよう? でも、ベアトリスは信用できる。それに既にばれている。下手に隠すより、正直に話そう。
「ベアトリス、俺様の中の人が男だって知っても気持ち悪くない?」
「最初はびっくりしたけど、お姉ちゃんはお姉ちゃんというよりお兄ちゃんみたいな処があったから、納得した。それにお姉ちゃんの中身がどうだっていい。ベアトリスはお姉ちゃんが大好き。だから協力させて!」
「ありがとうベアトリス」
俺様は笑顔を妹に向ける。ベアトリスもにっこり微笑んだ。可愛ぇぇなぁぁ
「私に考えがあります。アドロフ様を頼りましょう!」
「アドロフ様って、まさか第一王子のアドロフ様?」
俺とあーちゃんは顔を見合わせた。どゆ事? KWSK
「私、水魔法学級で先輩のアドロフ様と何度かお話しました。とても優しく、聡明な方です。アドロフ様の聡明な頭脳を頼ればと思います。アドロフ様は優しいし、決して人を害する様な事はしません。絶対いい考えを教えてくれる筈です」
「しかし・・・アドロフは・・・」
「確かにいい考えかもしれません。アドロフ様はとても優しく、女性をとろけさせるのがお得意ですので」
なんか、あーちゃんの説明で、逆に身の危険を感じるのだが、気のせいか?
こうして数日後にアドロフに会いに王城を訪れる事になった。三人への求婚の返事は幸い勇者ベルンハルトのおかげで更に1週間伸びた。アドロフとの面会はベアトリスが手をわずらってくれた。アドロフとベアトリスはもしかして?
こうして、アドロフと会う事になったが、アドロフはかなりの曲者だった。俺様達が事情を説明すると、しばらくアドロフは思案すると、ベアトリスもあーちゃんも下がらせて、俺様と二人っきりで話がしたいと言い出した。そして二人っきりになった。
「噂に違えぬ美しさを持つケーニスマルク家のクリスティーナ穣がまさか、頭の中が男だとはにわかに信じられないが、ベアトリスがそういうなら本当なんだろう」
「そうなんだ。俺様、前世の国で全然違う世界の日本という国にいた。そして、その国では男だったんだ。だから、その・・・男と結婚したくない。死んじゃいたい位嫌!」
「何とももったいない。それだけの美貌と家柄に恵まれて」
しかし、アドロフは突然その柔和な笑顔から、知的な冷たい顔となり、こう言った。
「僕の王座奪還に協力してくれるなら、君に協力しよう」
そこには優しく、穏やかで、柔和なアドロフはいなかった。そこにはかつてのカールを連想させる何処か冷たい光を目に宿す知的な男がいた。俺様は冷や汗が止まらなかった。俺様はとんでもない間違いをしたんじゃ?
「君も知っての通り、カールはアン・ソフィという平民の女性を正妻とする事になった。信じられない事だ。彼は僕と同類だと思っていたから・・・だが、困った事にそのおかげで、第二王子ヨハンが王位に就く可能性が高くなった。無論、彼は毒殺するつもりだから、問題は無いのだが、問題は私に後ろ盾が無く、ヨハンにこの世から退場を願っても、今度はカールに王座が転がり込む可能性が大きい事だ。僕の母は平民出身だ。だから、貴族共の受けは僕は悪い」
この人、今、さらっと、実の弟を毒殺するって言ったよ! ヤバい奴だよ、こいつ! 俺様はなんか蛇に睨まれた蛙の様な心境になった。そして、聞いた。
「俺様は何を協力すればいいんだ? 当然、何かの取引なんだろう?」
「察しが良くて助かる。僕と婚約して欲しい」
「はぁ!」
俺様はびっくりした。それ解決になるの?
「あの、だから俺様は男とその結婚したくないので、その.....」
言葉を慎重に選ぶ、俺様は飛んでもないのに捕まってしまった。
「安心しろ。君の気持ちは知っている。君に手を出したりしない。それに、僕は君の妹ベアトリスを愛している」
「ベアトリスを!」
俺様はちょっと、嫉妬を感じた。妹を他の男に盗られる兄、あるいは父親の様な気持ちか? しかも、相手が悪い。よりにもよって、この男は優しい仮面を被った冷血漢だ。
「しかし、俺様と婚約したら、ベアトリスが!」
「僕は君とベアトリスの両方に婚約する。最初にベアトリス、そして次に側室として、君に求婚する」
「それって、大丈夫なのか? 俺様の家、結構敷居高いぜ。父ちゃんが怒るじゃないかな? どちらか一人だけなら、問題ないけど、二人同時にだなんて.....」
「そこで、君の協力が必要なんだよ。僕はあくまで、ベアトリス穣に求婚に行く、そして、君は自身も僕を好きだと言ってもらい、僕がその場で君からの求婚を受け入れるという具合だ」
俺様、超カッコ悪く無い? 妹の旦那に横恋慕な訳?
「ベアトリスには予め事の次第を話しておけば問題ない。ケーニスマルク公も自身の娘の幸せを考えるだろう。ベアトリス穣は僕の事が好きなんだから、そして君もね」
「お前、本当にベアトリスの事、好きなんだろうな?」
「ああ、それは事実だ。愛らしい、僕の母にそっくりだ。妻にするなら彼女がいい。もちろん、ケーニスマルケ家の力も魅力的なんだが」
「父ちゃんの力が欲しいだけじゃないだろうな?」
「それなら、君と婚約するだけだよ。でも、僕はベアトリスを他の男に渡したくない。だから、ベアトリスと最初に婚約する」
多分、嘘ではないだろう。嫌、噓じゃないと信じたい。どちらにしても俺様に選択肢はないのだ。
「わかった。信じる、だけど、ベアトリスと婚約なんて、簡単にはいかないぜ。他の貴族やそれこそ、第二王子のヨハン様が最大のライバルじゃないか?」
「それは安心しろ。既に父上にベアトリス穣との婚約を承諾してもらっている。君の父上も承諾したよ。何しろ、君が突然外国へ出奔するから、ケーニスマルク公も父上のいう事を聞くしかなかった様だ。父の機嫌を損ねれば、君の首は今頃、胴体とさよならしてたかもね。それと、君の父上はヨハンを次期国王へと考えていた様だが、我が王家にヨハンは相応しくない。君の父上は王家を自在に操るつもりだった様だが、そうはいかん」
俺様はこんな奴に関わるべきじゃなかったと思った。心の底から......
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