異世界"イルト" ~赤の領域~
28.硫黄の街 ~メルカンデュラ~
◇◇
"赤の領域"。
人気の無い集落の中央には、黒い
「なあ、この村は"ドワーフ"共がいるんじゃなかったか? ──誰一人、いやしねえじゃねえか」
「他の連中に先を越されたのかもな。村人が全員いなくなるなんざ、俺達──"黒の騎士団"以外の
「へへっ、そりゃそうだな。──ん? おい、あれ見ろよ」
騎士の一人が指差した先に、二人の人影が見える。巻き上がる
「おっ、あいつらか。──さてはあの野郎共、"シェスパー"様の配下だな」
二人の人影が、
「な……誰だ、てめえら!?」
「──こんにちは。通りすがりの──伝説の"人間"です」
人影の一つはそう言って、
「何だ、その剣は……? 刃がねえじゃねえか?」
「正直者にしか見えない剣なんです。……なんちゃって」
「馬鹿にしやがって、俺らを誰だと思ってやがる……。覚悟しろ、クソ野郎!」
騎士は二人
男──クウが
騎士二人の剣がクウに振り下ろされる寸前、
騎士達は、斬撃と同時に生じた風圧を受けて倒れ、そのまま動かなくなった。
「──お見事。クウ、
クウの隣の人影──フェナが
「毎日、私と
「16体目──かな」
クウは今しがた倒した騎士二人の
「──前にも、倒した
「
「そんな
「分かってるよ。だけど、そういう相手にも、同じ様にするって決めてるんだ」
「人間って、変わってるのね」
フェナは倒れた騎士達の身体を探り、何かを鎧から抜き取ると、クウに向かってそれを投げた。
「うわっと。……何これ?」
「鶏肉のサンドイッチね。──こういう
「毒を食らわば皿まで、だね。僕も次からはそうしようかな」
クウは
「壊され過ぎてるよね、この村。──フェナ、どう思う?」
「何かに襲われたみたいね。住民達は──集落を捨てて奥の方に
「何かって、何?」
「"
聞き覚えの無い単語に、クウは首を
「イルトの
「ドラゴン……。ファンタジー世界じゃ
「確証は無いけど、考えておくべきかもね。村の壊れ方を見る限り、大型生物がいる事はまず間違いないから。──どうする? この奥に、行ってみる?」
「今、それを考えてるよ」
警戒に満ちた目で、クウは村の奥へ続く空間を
「まずは、"大盾のドルス"を探そうと思うんだ。──結局、セラシア王女の言ってた白と赤の境界付近では、彼を見つけられなかったからさ。彼がいるとしたら、もうこの先ぐらいしか考えられないんだよね」
クウはそこではっとして、腰の袋をごそごそと探り、セラシアから
「あ、着信アリだ」
クウは
「──もしもし、セラシア王女。こちらクウです。」
(セラシアですわ。クウさん、
「あ……気にしないで下さい。人間が遠距離で会話する時に、
(あら、そうですの。覚えておきますわね)
「セラシア王女、ご
「
「セラシア王女、ドワーフ達はいません。集落の大半は物理的に破壊され、住民の姿は
(それは、
クウの予想は、どうやら当たっていたらしい。
("ドルス"の部隊は半数が死亡してしまいました。
「"十三魔将"……そうですか」
(クウさん、
「分かりました。これからどうしようかと思ってましたけど、これで迷う必要が無くなりましたね」
(ああ、クウさん……。感謝いたしますわ)
「お互い様ですよ。僕らだって、あなたに助けて頂きましたから。──では、セラシア王女。今後でまた連絡しますね」
クウは、赤い光が
続いてクウは真横のフェナを見る。フェナは地面すれすれに顔を近づけ、何かを
「クウ。この先──血の
「負傷兵が多いって言ってたね。急がないと。──行こう、フェナ」
クウはフェナと共に、"メルカンデュラ"の奥に駆け出した。
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