第二部
第1話 父母への手紙
拝啓
父さん、母さん、元気ですか?
僕は不老不死になりました。
この世界に来て10年の月日が経ちました。
届くあてのない手紙も、書いてみようなどと思ってしまったわけです。
なんだかこっちの世界に来てからのほうが、長く感じます。
でも、僕はどこも老けた感じはしません。
若作りとかじゃありません。僕だけじゃなく、銀杏くんもまったく姿が変わりません。
でも、そんなことは比較的どうでもいいです。
僕にはたくさんの仲間が出来ました。
友達100人出来るかななんて小学生のときに思ってたけど、
今や仲間が1000人以上の街になりました。
大きな城壁も作って、お堀も掘って、まるで日本の城みたいにしました。
城壁作ったの僕です。お堀は銀杏くんが工事しました。頑張ったんだよ。
初めから1000人もいたわけじゃないんです。
壁を作って、ゾンビが来ないようにしてたら、10年かけてわらわらとどこからか人が集まりだしたんです。
だからここは移民の街です。
そして、この街の責任者は、なんと僕です。
銀杏くんが責任者になるべきだって言ったんですが、その銀杏くんが僕を推してきました。
本気の目だったので、承りました。その代わり、銀杏くんが副市長です。
責任者になった僕は毎日がとても忙しいです。
すべての仕事を放り投げたいですが、そうもいきません。
街のみんなには、掟を作りました。
一つ、街の外に出るには僕ら2人の許可を得ること
一つ、亡くなった家族は必ず僕ら2人の前に差し出すこと。
僕らの負担がひたすら重い。
外出、特に猟には、対ゾンビ対策に僕ら2人が猟をするメンバーを守るようにしました。
でないと、外出した人がゾンビになってしまう可能性があったからです。
2つ目の掟もゾンビ対策です。家族がゾンビ化してしまったのを倒します。ゾンビの砂を吸い込んでもゾンビ化しない僕らにしか出来ない仕事です。
僕ら2人でゾンビ化した人たちを殺すのはとてもつらいです。1人だって大切な仲間だから。
でも、やらなきゃ、ゾンビが増えるから。心を鬼にします。
おかげで、ゾンビの街への侵略数は低減してきています。
この世界に来て、僕ら2人を助けてくれてる4人も紹介しますね。
コトミは、20代後半の女性です。銀杏くんと結婚して2児のママです。銀杏くんが作った大きな畑と猟はコトミの担当です。いつも大きな獲物を取ってきてくれる素晴らしい猟師です。
シュウは家畜を担当しています。畑や猟だけじゃ食料が足りないから、自分たちで育てようという感じになりました。ニワトリや豚、牛がいます。みんなカワイイです。そしてとっても美味しい。シュウは優しいから、任せて正解でした。
レナは僕の秘書官をしてもらっています。16歳の女の子です。
父さん、母さん。僕には女の子がよくわかりません。レナは事あるごとに僕を愛してると言ってきます。というかもう旦那様と呼ばれています。
僕は不老不死ですが、32歳です。16歳の女の子と結ばれていいのかどうか非常に迷うのです。
最後にツキ。子どものころはワンパクで手の付けられないヤツでしたが、銃を撃つようになってからは別人のようにのめりこみました。
今や、この街の自警団の団長です。壁の上からゾンビを狙えば百発百中。たぶん僕らの中で一番ゾンビを殺しているかもしれないです。
父さん、母さん、
僕はもとの世界に帰れるのでしょうか。
もし帰れたら、僕の料理スキルで、美味しい料理をつくるよ。
言っておいてなんですが、こちらの生活に慣れすぎて、帰れなくてもいいと思っています。
この街にいる1000人と、生死を共にしたいと思っています。
親不孝ばかりしてきて、ごめんなさい。
また手紙を書きます。
次はきっとまた10年後かもしれません。
お元気で。
敬具
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