第59話 ある「きっかけ」を境に・・・
野球とはこれまた一見関係ないようですけど、文章を書くには、やっぱり、それに応じた「体力」というのが必要です。その「体力」の正体というのは、実は、人によって異なるという面もありますが、私の場合は、とにかくパソコンに向かって何か文字を連ねていく、それに耐えられるに必要な気力までを含めた体力ということになっているようです。
野球にしてもそこはもちろん一緒で、ましてや彼らは肉体を使って何かをやって「魅せて」なんぼの商売ですから、なおのこと。必要な部分とそれに応じた体力はつけないといけない。逆に、酷使しすぎてもいけない。それがまた、人によって違うからね、ということ。
大投手の沢村栄治さんは軍隊で手りゅう弾を投げすぎて肩を壊したのは有名な話。最後は、輸送船が沈んでの戦死。逆に、杉下茂さんは、その軍隊で手りゅう弾投げをすることで体力がつくと同時に肩も強くなって(それまではむしろ弱かった)、戦後あれだけの大エースになった。そこにとどまらず、なんと90代を超えた今もお元気どころか、プロ野球のキャンプでは杖も使わずしっかりと立って投球練習を見守っておられる写真が出て、仰天!
そういう大きな差になったのには、お二人の置かれた環境とそれまでの状況も大いにあるでしょうけど、人によって同じようにやったことでも違った、場合によっては真逆とさえいえるような結果にもなる、いい例と言えましょう。
それから、選手があることを境に急激に伸びるとか、あるチャンスをきっかけにパッと出てくるとか、そういうのも、ありますよね。同じように練習していたら一次関数の直線のように比例して伸びるわけでもない。同じような状態がしばらく続いているかと思えば、あることを境に、ドンと伸びるようなこともままある。
実は、私も小説を書こうと思い始めてこれまで3年弱、かれこれ書いてまいりましたけれども、それまでとは明らかに変わったな、今まで書けなかったところが書けるようになったな、と思える瞬間、というか、そういうものを直感で感じたことが何度かありました。
私自身のこれまでのパターンとしては、小説のあるパートを書いていて、そこで急に何かが開けたような感じになることが複数回ありました。ある時などは、それで書けるようになったその日に、なぜか、メガネが行方不明になってしまったこともありました~ひょっとして、探せばどこかから見つかるかもしれないとは思うのですけど、まだ見つかっていないのです(苦笑)。そのメガネ事件のあと、あることを思い立ってその方針で2か月ほど書いていたら、今度は、量的な意味でますます書けるようになっていて、さらに1か月後、ようやく、出版社の方からお声がかかった、という次第。
それから、それこそ昨日の「疲労」の話になりますけど、あの後ゆっくり休んで今朝起きて今こうして書いておりますと、何か、不要な力を入れずにすいすいかけているような感覚です。
その「力」というのは、パソコンを打つという物理的な力の入れ具合というだけでなく、精神的な意味、もっと言えば頭自体をそれほど回転させているという実感がわかないほどの状態で、文章が書けていると言いますか、そんな感じですね。こうも言えます。これまでは頭が若干ヒート状態になりつつ書いていたのが、今はなんと言いますか、ほとんど熱を持たないままで作業がすいすいと進行しているような状況、とでも申し上げたらいいような感覚です。これも、これまでにはなかった感覚です。
こういう不思議な「進化」を、野球選手をはじめとするスポーツ選手に限らず、いろいろなところで、いろいろな人が、さまざまな形で感じつつ、仕事などをされているのじゃないかな、と思うのですが、こればかりは、本人やその周りの指導者や誰かが意図的に作り出そうとして作れるものとは必ずしも限らないですからね。
ただ、一言言えるのは、そういう状態になるまでじっと待って、伸びた段階でさらに伸ばしていくための措置を落ち着いて取れるようになれたのは、やはり、人を教える仕事、具体的には学習塾で中高生を中心に教えていた経験のおかげだと思われます。それは言うなら、「芽が出るまでじっくり待つ」忍耐と根性が見についた、ってところでしょうかね。
(2020.09.17)
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