第1話 全国大会進出
「やった…!やったよ!!」
僕は、本当に間違いないのか、今貼り出されたばかりの結果を見直す。
間違いない。そこには僕の名前が記されていた。
「タオ…!やった…!!」
横でお母さんが声を震わせながら僕に声をかける。
その掲示には『全国大会進出者 第1位 如月 タオ』としっかりと書かれていた。
「せ…先生に…」
僕は、少し離れた長椅子にゆったりと座る先生の元へ走っていった。
先生は僕の様子を遠目で見ていたのか、目指していたものを得たことを既に理解している様子。
「おめでとう、タオくん。全国大会進出ね」
「はい、保木先生…全国大会でまた演奏できます」
にっこりと笑った保木先生。
立ち上がって、僕の肩をポンポンと叩いた。
「タオくんの夏は、まだ終わらない。これから、まだまだ熱い夏を、大好きなはるか先生と過ごせるのね」
「頑張ります!東京で保木先生にお会いできますよね?」
「会えますよ、こちらからも2名、全国大会が決まってますからね」
「保木先生にいい演奏を聴いてもらえるよう、頑張ります!」
後ろから、お母さんが妹の美央を引き連れてやってくる。
「保木先生、本当にご指導いただきありがとうございます。お陰様で全国大会に出られることになりました」
深々と挨拶をする。
「タオくん、よく頑張りましたね。本選1ヶ所目で第1位通過だなんて、優秀なお子さんですよ」
「いいえ、先生のご指導のおかげです。ご相談させて頂いていた通り、これから私どもの自宅に戻らせていただきます。寮に戻るのは8月31日の予定ですので、落ち着いてから9月からのレッスン日程をご相談させてください」
「東京でお会いするのが先になるのね。はるか先生とは連絡はとっているのだけど、全国が決まった連絡はタオくん、あなたからなさい。きっと大喜びされるわよ」
「はい!お母さん、電話してきてもいい?」
僕は手に持ったスマホで先生の連絡先を探す。
「はるか先生も結果を心待ちにされてるよね。あっちで電話してらっしゃい。お母さん、保木先生とのお話もあるから」
「…うん!先生、失礼します」
僕は、保木先生に頭を下げ、ホールの電話ボックスがある場所に走っていく。
はるか先生…!
また大好きなはるか先生のレッスンが受けられる…!
はるか先生に一秒でも速く伝えたくて、ボックスにつく前に通話ボタンを押す。
…つながった!!
「先生、僕、全国大会決まりました!!」
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