第1話 僕のトクベツ
「はぁ…会いたいなぁ…」
僕は寮の窓から見える雪を眺めながら呟いた。
最初は慣れないことも多くて大変だった寮生活だけど、そろそろその生活も1年経つ。あと1ヶ月たてば後輩も入ってくるころだ。
僕は、如月汰央(きさらぎ たお)中学1年生。
親が教育熱心なこともあって、地元の県ではなく、ちょっとした中核都市にある私立中学へ進学した。親元から離れた寮生活。そんな中で、僕の心の支えとなったのは、4歳の頃から打ち込んでいたピアノだ。
全国でも指折りの指導者がいる、ということで、前に習っていた先生に紹介してもらった今の先生は、60歳を超えた女の先生。
ガミガミ系ではなく、楽しんで演奏しなさい、と言ってくれるタイプで、僕は住む場所こそ変わったけど、ピアノを楽しく続けている。
でも、これまで毎週会っていたピアノの先生と会えないのは正直辛い。レッスンもだけど、コンクールも引率してくれて、全国大会に進めた時も来てくれたことがある先生。
年長さんの時に全国大会に初めて出場して、僕は子供用の足台を設置してもらうのは先生がいい!とダダをこねたそうだ。
先生は舞台袖までずっと僕に付き添って、一緒に舞台に上がり足台を設置してくれて
「たおくん、せんせい、むこうできいてるからね」
って耳元で囁いてくれたのは鮮明に覚えている。
よし、先生が聴いてるぞ!と思って僕は演奏して、なんとその全国大会で金賞をもらった。
本当にいい思い出だ。
その頃から、先生は僕のトクベツ。
ただのピアノの先生じゃなくて、僕をいつも応援してくれて側にいて励ましてくれる、理想の人なんだ。
「はるか先生、元気かなぁ…」
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