第21話 閑話:ステイホーム警察~実録・疫病の蔓延する街で自粛活動をする人物に迫る~

私の仕事は日々の見回りだ。

この疫病が蔓延したこの世界で、三密を作っている者共に正義の鉄槌を下すために存在している。

そう私がやらなければ、誰がやるというのか。


国はできるだけ密集は避けましょうとか、在宅勤務をすすめましょうとか、7割8割人との接触を削減してくださいなどとあいまいな政策をとるばかり。

なんら具体的な手を打とうとはしやしない。

これでは三密を作っている馬鹿な者たちに正義の鉄槌が下せないではないか。

だから私がお国の代わりに正義の鉄槌を下すのだ。


ステイホーーーーーム!!

シャルウィーーーーゴートゥーーーホーム、ナゥーーー!!!


我々は家で大人しくしていなければならないのだ。

蜜は避けなければならない。

密集、密接、密着っ。

三密は避けなければならないのだ。

ソーシャルディスタンスは保たれなければならない。


そう。

そうしなければならないのにっ。

あの小娘ときたらっ!!


私はいつものように夜明け前から自主的に、ステイホームを啓発するために見回っていると。

いつもの様に、いつもの場所で。

よりによって、マスクもせずに。

ぼんやりと朝顔の花を見つめる着物の少女を見つけた。


この娘はいつもそうだ。

いつもいつもそうなのだ。

この疫病のさなか、マスクもつけずに着物を着てふらふらと出歩いている。

私はマスクをつけろと何度も注意喚起を促した。

促したにもかかわらず、一向につける気配すらない

何度自分の家で自粛しろと言ったか数えることもできない。


ああ……。

もはやこれは罪なのではないか。

国に訴えても勝訴できるのではないか。

そう思えてくる。


しかし私も節度ある大人である。

だから国に訴えるなんてことはしない。

あくまで注意喚起を促すだけだ。

私はマスクの下から大きく息を吸い込むと。



「ステイホーーーーーームっ!!!」



そう大声で叫びながら駆け寄っていく。

私のその姿を見つけるや否や、少女は気まずそうな顔をして反対方向に駆けて行った。


正義は勝つ。

正義は勝つのだ。

そう、私こそ正義なのだ。


世に蔓延る三密を駆逐する為に、私は身を粉にして自主的に働き続ける。

誰に言われてすることもなく、自主的に働き続けるのだ。

人々は私の事をこう呼び崇め奉る。



「ステイホーム警察」、と。

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