第16話 閑話:薄れゆく意識の中で~共に歩んできた道~

ぼんやりと薄れゆく意識の中で思う。

ああ、楽しかったな……って。

俺の人生は楽しいものだったなって。


俺と羽衣と静空で、馬鹿な話をして。

羽衣と静空は馬鹿みたいに魔法の打ち合いをして環境破壊をしたりして。

それで学園の先生に一緒になって怒られたりして。

それでも楽しかった。

楽しかったんだ、俺は。


羽衣と静空は幼馴染だった。

小さい頃からの腐れ縁。

まぁこの狭い村ではよくあることだけれども。

保護者同士の仲が良かったっていうのもある。

だから一緒に遊んでいた。

三人で一緒に馬鹿なことをやったりした。


俺は小さい頃から"魔法"は苦手だったのに対して。

二人は小さい頃から"魔法"をたくさん使うことができた。

特に羽衣の使う"魔法"は様々で。

羽衣の使う"魔法"は煌びやかで。

俺はあいつの"魔法"に憧れていた。

そしていつのまにあいつの事を。

羽衣自身の事を目で追うようになっていた。


静空はその事に気付いていたみたいだったが、羽衣はそんなことは気付いちゃいなかった。

羽衣はいつもマイペースで。

けれど自分の使う"魔法"に自惚(うぬぼ)れることなく。

決して自分の力を鼻にかけるようなことはしなかった。

落ちこぼれの俺にも平等に接してくれて。

だから、いつの間にか、俺は、羽衣の事を。

羽衣の事を好きになっていった。


だから、これで良い。

あいつに対して何も恩を返すことができなかった自分が羽衣の事を守れたのだから、それで良い。

好きになったやつの事を守ることができたのだから、それで良い。

そう思える。

俺の落ちこぼれの人生で、それだけのことができたんだから十分だ。

十分すぎるくらいだ。


羽衣……。

お前達と一緒に過ごせた時間は決して長いものではなかったけれども。

それでも俺は楽しかった。

十分すぎるくらい楽しめた。


だから、羽衣。

お前はこれからもしっかりと。

ちゃんと、羽衣らしく。

俺がいなくなっても。

何者にも惑わされない、羽衣であって欲しい。


これからも。

ずっと……。

ずっと……。

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