第27話 ダーツと漫画喫茶

それから数日が経った。

部屋の掃除をしていたら、ダーツセットが出てきた。


「あっ……」


俺は大学生の時、よくダーツをやっていた。

横山に教えてもらって初めてやったダーツにハマり、マイダーツを購入するほどハマったのだ。


「そういえば最近、ダーツもやってないな」


俺は押し入れから出てきたマイダーツを見て、久しぶりにダーツをやりたくなった。

加奈はやったことあるのかな?

加奈にメッセージを送ってみる。


「加奈はダーツやったことある?」

「ダーツはやったことないよ」

「俺、大学生の時はよくダーツやってたんだ。部屋の掃除をしてたらマイダーツが出てきてさ。久しぶりにやりたくなったんだけど、加奈も一緒にやってみない?」

「あれだよね。映画とかで暗殺者がピュッて投げて的の真ん中に当ててるやつだよね?」

「うん。そうそう。まあ俺、そんなに上手くはないけど」

「ちょっとやってみたいかも」

「よし、じゃあ決まりだ。来週はダーツやりにいこう」

「うん」


それから一週間が経ち、加奈とダーツをする日がやってきた。

ダーツが出来る場所は、ネットカフェの中にも併設されている事が多い。

加奈と待ち合わせて、待ち合わせ時間よりも少し早めに着く。

加奈を待っていると、加奈は時間通りにやってきた。


「お待たせ」

「それじゃ、行こうか」

「うん」


ネットカフェは、駅から歩いて五分の距離のところにある。

ネットカフェに到着すると、加奈がテンションが上がっていた。


「ねぇ。智也君。ここってネットカフェだよね?」

「うん。そうだよ。ネットカフェにダーツが設置されてる店も結構多いんだ」

「漫画も読み放題なんだよね?」

「うん。そうだよ」

「私、ネットカフェ興味あったけど行った事ないんだー」

「えっ?そうなの?」

「うん!!漫画も読めるの?」

「そうだね。ネットカフェの料金体系は、何やったかじゃなくて滞在時間で計算されるから漫画も読めるよ」

「おおー!!私、後で漫画読みたい」

「いいよ。じゃあダーツやって、その後で部屋取って漫画タイムにしようか」

「やったー」


意外にも漫画好きの加奈は、ネットカフェに行った事がなかったらしい。

受付をした時に、加奈に会員カードを作りなよと勧めてあげた。

加奈は、新しく会員カードを作った。


「これで加奈も漫画喫茶に好きな時に一人でも行けるよ」

「おおー、やったね。私のネットカフェデビューだ」


まずはダーツの席を取った。

部屋に入り、割り当てられたダーツの席に行く。


「ここだね」

「智也君、マイダーツ持ってるんだよね。どんなのー?見たい」

「これだよー」


俺はマイダーツを加奈に見せてあげる。


「うわっ!!本気でやり込んでる感じが伝わってくる!!」

「うん。大学生の時は、友達に教えてもらってハマってからかなりやってたからね」

「そうなんだ」

「今日は加奈にダーツをじっくりレクチャーするよ」

「智也先生、よろしくお願いします」


そして俺は、プレイするゲームを設定する。


「んー、じゃあまずは基本のこれからやるよ。カウントアップ」

「カウントアップ?」

「まあルールは単純明快なんだよ。0点から始まって1ラウンドにつき3本投げて交代。それを8ラウンドまでやって合計得点を競うっていうゲーム」

「そっかー。わかった。簡単だね」

「加奈。こっち来て」

「うん」


加奈を的の近くまで来させる。


「ここに数字が書いてあるでしょ?20とか1とか。これが得点ね」

「うんうん」

「で、外側の狭い部分のエリアに当たったら、その得点の2倍のポイントになるんだ。20の外側だと40点。その隣の1の外側だと2点」

「あー、なるほどー」

「で、この中の狭い部分のエリアに当たったら3倍のポイントになるんだ。20の3倍だと60点。1の3倍で3点」

「うんうん」

「で、ど真ん中。ここの事をブルっていうんだけど、ブルに当たると50点なんだ」

「うん。オッケー。得点の付け方は、わかったよ」

「まあだから一番大きいのは、20点の3倍の60点。次に19点のトリプル。18点のトリプル。17点のトリプル。ブルって感じかな」

「うんうん」

「まあやってみようか。その方が早いね」


そしてスタートする。


「あっ、そうだ。それで投げる時なんだけど、この足元に引いてあるラインを越えて投げたらダメなんだ」

「うんうん」

「立ち方なんだけど初心者にオススメなのは、ミドルスタンス。こうやって前足出して投げるの。安定するでしょ」

「うん。投げやすそうだね」

「加奈はそれでやるといいよ。俺くらい本気でやってると、クローズドスタンスって立ち方をするんだ」

「立ち方も変わるの?」

「そう。ラインに平行になるように足を横にして、重心を前に持っていく立ち方なんだけど、これをやると少し距離を稼げるんだ」

「あー、そっかぁ。前かがみになるんだね」

「うん。まあ加奈は、ミドルスタンスでやるといいよ。俺も最初は、ミドルスタンスから始めたんだ」

「わかった」


まずは俺が三本投げる。

20点、18点、18点。合計で56点だった。


次に加奈が投げる。

14点、7点、16点。 合計で37点だった。


交代して俺が投げて、今度は加奈が投げてを繰り返していく。

そして8ラウンドが終了して、ポイントアップが終わった。

俺は602点で、加奈は292点だった。


「おっ、加奈。結構ポイント高いじゃん」

「そうかな?」

「うん。初めてでそれだけ取れれば十分だよ」

「やったー」

「これがポイントアップってゲームなんだ」

「うん。簡単だねー」

「次は301をやってみようか」

「301?」

「301はね、最初に点数が301点あるんだ。それを減らしていって、301点ぴったりを目指すゲームだよ」

「減らしていくんだね。わかった」


そして301をプレイする。

お互いが投げていき、ポイントがどんどん減っていく。


そして50点を下回って来た時だった。

加奈の投げた矢が、20点のトリプルに当たった。


「やった!!20のトリプルだ!!」


しかし機械の画面には、バーストという文字が出た。


「あー、バーストだ」

「バースト?」

「50点ぴったり取らなきゃダメなんだよ。だから0点扱い」

「ああー、そういうことかー。せっかく取れたのにー」


俺は残り10点。ここで勝つのは簡単だ。

でもここは、加奈を勝たせてあげようと思い、わざとバーストを連発する。


「あー、俺バーストだ」

「危なかったー。次、私だね」


そして加奈は、何度かバーストしつつも、ついにぴったりポイントを取る。

加奈の勝ちになった。


「あー!!先に当てられた!!加奈の勝ちだね。……と、まあこういうゲーム。これが301」

「面白い!!」

「ちなみになんだけどね、301の他にも501とか701ってのもあるんだ」

「へぇー、なるほどー」

「どうする?もう一回やる?」

「うん!!301もう一回やりたい」


加奈は、301にハマって何度もやった。

勝ったり負けたりを繰り返して、時間は過ぎていった。


「私、ダーツにハマりそう」

「面白いでしょ?」

「うん。智也君が使ってるマイダーツいいなぁ。私もマイダーツ欲しい」

「マイダーツはね、経験を重ねて色々試したなぁ。自分のプレイスタイルに合ったやつを探すんだ」

「へえー」

「初心者でも使いやすいやつ、選んであげようか?」

「うん。選んでー」


初めてダーツをプレイしたその日に、加奈はマイダーツを購入した。


「私、やり込みたい。またダーツやりにこようね」

「うん。いいよ」


それからダーツを終わり、漫画喫茶の席に移動した。

移動中に大量の漫画が置いてあるのが見えて、加奈がテンション上がっていた。


「うわー、いっぱいあるねー!!何見ようー!!」

「まあどれでも好きなの選ぶといいよ。フリータイムだし、時間はいくらでもある」

「うん。見てくる」


加奈は、すぐに漫画コーナーへと向かっていった。

加奈が数冊の漫画を抱えて戻ってきた。


「何持ってきたの?」

「ダイナマイトパンチだよ。ボクシング漫画」

「へぇー。そんなの読むんだ」

「昔、風邪引いた時に病院の待合室で読んでたら面白かったの。でも買いたいって程ではなくてさ」

「あー、なるほどねー。そういうラインの漫画は、確かに満喫で読むのがいいね」

「うん。よーし、いっぱい読むよー」

「俺も何か取ってこよう」


俺も普段は、読まないような漫画を読もう。

俺はあえて少女漫画コーナーへ行った。

そして俺は、少女漫画を手に取り戻ってきた。


「智也君は、何を持ってきたの?」

「戦国女子高生」

「あっ!!それ知ってる!!学校帰りに戦国時代にタイムスリップして、武将と恋に落ちるやつだよね」

「うん。そう。なんか面白そうだなーと思って」

「私もそれは買ってないなぁ」


二人とも普段は、自分では買わないようなジャンルの漫画を読みふける。


「ねぇ、智也君」

「ん?」

「ネットカフェって凄く楽しいね」

「しかも、これでフリータイム使っても五千円もしないからね。まあご飯代とかは別だけど」

「ねー。料金も安いし、こんな面白いならもっと早く知れたらよかった」


加奈は、初めてのネットカフェがとても気に入ったみたいだ。

それから俺達は、昼食も夜のご飯もネットカフェで済ませて、一日中漫画を読み漁った。

そして店を出た。


「んー!!いっぱい読んだー!!楽しかったー!!」

「俺も色々読めたなー。楽しかったよ」

「また来ようね」

「加奈、凄く気に入ったみたいだね」

「うん。気に入った」

「それじゃ、またね」

「うん。帰り気を付けてね」


帰った後、俺は読んだ漫画の続きが気になりすぎて、続きのネタバレを検索したのだった。

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