第629話 アンナ復活!

「おかえり、ノクト!」



 具合はどうだ?と部屋に入ってきたのは、ノクトだった。相変わらず、自由なようで後ろからリアンが引っ張っていた。



「ノクト様、その濡れた体で、アンナリーゼ様のお部屋に入らないでください!」

「あぁ、すまん……じゃあ、着替えてきてから後程くる!」

「お嬢さんは、具合どうだね?」



 続いて泥だらけ……どうしたら、そんなに汚れるのかわからないが汚い恰好でヨハンが入ってきた。

 それを見て、卒倒しそうなリアン。



「ヨハンさん!!!」

「ん?」

「その汚い格好で部屋に入らないでください!お二人とも、お風呂に入ってきてから

 この部屋に入ってください!だいたい、女性が寝ている寝室に、不躾に入るのは

 いかがなものかと!」

「えっ?だって、アンナだし?」

「……医者だし?」



 二人がきょとんとリアンを見て、それぞれの言い分に盛大にため息をついた。

 なんだか、申し訳なさ過ぎて、苦笑いするしかなかった。



「ノクトにヨハン。お風呂に先に入って来てちょうだい。雨に濡れているのでしょ?

 二人共。あったまってくるといいよ!」

「アンナ様、お加減どうですか?」



 そこに、アデルも入ってくる。



「アデルまで……早く三人ともお風呂に入って綺麗にしてから来てください!」

「待って、待って。リアンさん、お風呂ならいただいてきましたら……」



 ノクトの後ろに隠れていて気が付かなかったが、アデルはこざっぱりとしていた。

 報告があったから来たらしいので、そのまま通してもらう。そして、汚い格好をした二人は、リアンに引っ張られて部屋から追い出されてしまった。



「なんか、リアンさん、荒れてましたね?」

「ノクトとヨハンがね……」

「あぁ、あれはないですよね……さすがに。アンナ様の部屋だって言ってもここは

 寝室ですもんね?まぁ、寝室に男と二人って言うのもあんまりよろしくないんで

 しょうけど……」

「まぁ、私がアデルより強いからいいんじゃない?」

「簡単な力比べでは、負けるでしょ?さすがに」

「まぁ、ね?」

「アンナ様の戦い方を見てても、わかりますが……ウィル様やエリック様と剣を

 交えたとき、さすがにまともに合わせてなかったんで、わかりますよ!」

「あぁ、アンナリーゼ杯?」

「えぇ、あれを見て、アンナ様に憧れた一人です。大男なエリック様にも全然負け

 ないし、近衛1と言われてるウィル様に勝ってしまわれたんですから」

「今なら、勝てないわよ!あのときは、まだ、ウィルも成長途中だったし……

 でも、まぁ、まだ、ウィルは成長途中ね……いつまで、成長するつもりなの

 かしらね?」



 ふふっと笑うと、たぶんですけど……とアデルが言葉を続ける。



「一生アンナ様の背中を追い続けるんだと思います。一緒に仕事をするように

 なって、端々から感じるウィル様の覚悟的なものは、他の誰よりも大きいですよね」



 私は言葉にせず、微笑むだけにした。

 今なら、たぶん、釣り合うのだろう。身分は、伯爵であるウィルも1代限りの爵位が本当ならもっと上がっているはずなのだ。断り続けていると聞いていた。



「それはそうと、何か報告があったんじゃないの?」

「あっ、はい。そうでした。アルカの報告があったんです。昨日から降り始めた雨に

 ついての報告です。束の間の晴れによって、多少の水分保有量が減ったと言って

 いましたが、この2日の雨で、また、元に戻ったようです。雨量が、この前の倍

 以上の早さだそうです」

「工事はどうかしら?」

「工事の方は、8分目と言うところです」

「8分目か……どうだろう……災害に耐えられるだろうか……」

「まぁ、なんとかなるとは思うぞ!」



 サッパリしてきたノクトとヨハンが部屋に入ってきた。

 リアンにも、これなら怒られないだろう。後ろからリアンも入ってくる。



「みなさま、おかけになって話されてはどうですか?お茶を今入れますから」



 私も話に混ざることにし、ガウンを羽織る。薄いガウンだったので、リアンがふわっとその上から肩掛けをしてくれた。



「それで?」

「あぁ、土木工事な。たぶんだけど、大丈夫だと思う。なんとか耐えられるかと」

「そっか。なら、いいかなぁ……でも、楽観的に考えてはいけないわね。最悪を

 考えておかないと」

「家の方は、もう後1日2日で出来上がる。外観だけだからな」

「とりあえず、雨風が凌げる場所があればいいわ!」

「それなら、もうすぐ終わる」



 私たちは頷きあって、確認をしあった。

 いつあるかわからない災害に備えて、動いてくれることで、本当に助かった。少しでも被害が減ることを考えながらここまで動いてくれたみなに感謝だ。

 できることなら、災害なんて起こらない方がいいに決まっている。そればかりは、自然のすることだから……私にどうすることも出来ないけど、少しでも対応が出来ていればなんとかなるものだ。



「アルカの見立てでは……たぶん、1週間もしないうちに災害が起きると言って

 いた。みなにも伝えていいでしょうか?」

「えぇ、出来るだけ情報は共有してちょうだい。きちんと、伝わるようにして」

「わかりました。明日には手配します」



 アデルがメモを書き、手続きをする準備をしてくれた。



「で、そっちはどうなんだ?ヨハン」



 あぁと話し始めるヨハンに耳を傾ける。

 長雨になって起こった伝染病。一体どうなっているのか、気にはなっていた。その報告をきくのであった。

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