第598話 とっても仲良しⅡ
エレーナは、子どもたちを連れて、私たちが泊っている宿まで帰ってきた。
実は、私たちが再会し、話をしていたのは、私たちが泊っている宿の一室だったのだ。
「戻りました!ほら、二人ともアンナ様に挨拶なさい!」
アンジェラたちより少しお兄さんお姉さんの双子は、両親によく似ている。将来、美男美女だろうと見つめていると、兄のマーフィーが一歩前に出た。
「初めまして、マーフィー・クロックと申します」
ペコっと頭を下げて挨拶をすると、その隣に並んで、スカートをちょこっとつまみ女の子が出てきた。
「リアーナと申します」
か……可愛い……お人形さんみたいね……
ほぅっとリアーナを見ながら、頬に手を当てると、下からアンジェラが覗き込んでいる。
「ママ?」
「ごめん、ごめん。初めまして、アンナリーゼ・トロン・アンバーです!お母さんの
エレーナとはお友達よ!よろしくね!」
マーフィーの方から手を差し出して握手すると、ニコッと微笑まれた。マーフィーも可愛いなと頬を緩ませてしまう。続いて、リアーナに手を差し出すと、両手でギュっと握ってきた。
それだけでも、すごく賢いか教育がしっかりされていることがわかった。
すごいわねと心の中で呟くとスカートを引っ張ってくる。両側から。
そちらを見ると、なんだかちょっぴり嫉妬しているような息子娘に思わず笑ってしまう。ジョージアが先に挨拶をしてから、私は二人に挨拶するように促した。
「アンジェラです!」
ニコニコっと笑う、うちの娘は……お人形どころの話ではないなぁ……と思わず、微笑んだ。すると、どや顔で、こちらに顔を向けてくる。
よくできたと頭を撫でると、ジョージが僕も!と挨拶する。まだ2歳の二人は、本格的に教えたわけでもないのに、レオやミアを手本に少しづつ礼儀作法を覚えて行っているようで、ものまねのようなたどたどしさはあれど、挨拶をした。
ジョージの頭も撫でてやると、目を細める。
「……お母様」
「どうしたの?マフィ」
「アンジェラ様がとっても可愛い!」
ほぅっと惚けたような顔をしながら、ボソボソっと呟くマーフィーにあらあらとエレーナは微笑んでいる。
「お人形さんみたい!」
リアーナもアンジェラを絶賛してくれるのだが、どや顔になっているうちのアンジェラを少々窘めるか悩んだ。確かに可愛いのだが……可愛いと言われ慣れて当たり前になってほしくなかった。
小さい今のうちは、可愛いをたくさん言ってもらった方が可愛く育つか……と、アンジェラの気持ちにそうことにする。
「アンジェラ?」
「ん?」
「よかったわね?」
「……うん!」
ニコニコしているが、一人、内心穏やかじゃなさそうな人物がいた。ふぅ……とため息ひとつしそうになったところを我慢する。
「ジョージア様、まだマーフィーは子どもですよ?アンジェラのこと可愛いって
言ってくれたことを素直に喜びましょうね!」
「……あぁ、そうだね。今のうちにうちの子の可愛さをわかってくれるなんて、
嬉しい限りだ」
それ、ダメなやつですと心の中で呟くと、エレーナが笑った。
「ジョージア様、心配なさらずとも……マフィは、クロック侯爵家の跡取りです
から……」
「……そういうことじゃないんだ、そういうことじゃ」
「わかっております。父としてですよね?旦那様もリアに対して同じようなことを
言ってますから」
「どこも同じなのね……ジョージア様、そんな渋い顔は、もう、なさらないでくだ
さいね!」
わかったといいつつ、まだ、目尻がねぇ?と、微笑むとエレーナもふふっと笑っていた。
「アンジェラ様、一緒に遊びましょう!」
「リア!」
「いいのよ!アンジェラも退屈してたのだから。いってらっしゃい!」
二人の背中を押すと、アンジェラはすぐに打ち解けた。ジョージは、私から離れようとしないのだが、もう一押しすると、リアが手招きしてくれた。
さすが、お姉さんだけあって、優しい。そこに、のそのそと行くジョージを見つめ、輪の中に混ざれたことに、ホッとする。
ジョージは、少し、人見知りをするようで、レオたちとも距離を置くこともある。今日は、上手にリアーナがバランスをとってくれているようで、四人が仲良さげにしていた。
一卵性の双子だけあって、兄妹の協力体制がバッチリだった。
「俺が見てるよ!ニコライはアンナたちの方に混ざって!」
「いえ、もう少ししたらデリアさんも戻ってくると……」
そういったとき、ネイトが起きたようで、泣き始めた。
私は、駆け寄ろうとしたが、先客が二人もいる。アンジェラとリアーナだ。私の前をパタパタと駆けて行った。
「赤ちゃんだ!可愛い!」
「ネイトだよ!」
「ネイト様?可愛いね!」
二人がベッドの縁でぴょこぴょこしながらネイトを見ている姿が可愛らしい。
そういえば、さっきから可愛いしか、言ってないし思ってないな……
ネイトを抱き起こし、様子を見るとみんなの話声が聞こえて、自分も混ぜて欲しい!という要望だったようだ。
「ネイトは、もう泣かない?」
「そうね、可愛いお客さんが来ていて、僕も混ぜて!ってことかしら」
抱きかかえて、アンジェラとリアーナの方を向けると、誰が泣いていたのかわからない程、きゃっきゃっと笑っている。
「触っても大丈夫?」
リアーナが、ネイトに触りたそうにしていたので、ベッドのヘリに腰掛けると両側からお姉ちゃんたちが覗き込む。
嬉しそうにしているネイトの頬を恐々触るリアーナと触られた手を握るネイト。さらに感激したリアーナは頬を上気させていた。
「ジョージもマーフィーと話し出したし、女の子どうしも仲がよさそうね!」
「そうですね、アンナ様」
「デリア!」
「ただいま、戻りました。片付けも少々手伝ってまいりましたので、遅くなりました」
「いいのよ!」
「ネイト様たちは、私が見ていますので」
そう言ってくれるデリアにお願いをして、私はソファに戻る。
机には入れ直したお茶が置いてあった。
「デリアさんほどじゃ、ありませんが……」
エレーナが入れてくれたようだった。一口エレーナが飲んで、私たちもいただく。
ほぅっと一息、とても懐かしい味がした。
「エリザベスとニナが作ったお菓子が食べたくなるわね……」
「いつもたくさん食べて下さっていましたからね?」
「そんなに食べていたの?」
「えぇ、とっても美味しいのですよ!エリザベスとエレーナが作るお菓子は、お兄様
のお墨付きですから!」
それは!とジョージアもニコライも興味が湧いたようだった。そんな懐かしい話をしていると、ここにいる間に作りますねと言ってくれたエレーナに微笑むのであった。
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