武雄は、居間に腰を下ろし、あぐらをかいて、じっとプラスチックに書かれた文字を見つめた。


────────────────────

居候屋いそうろうや


あなたの家に居候いそうろうしにいきます!


独り身で寂しいヒト、いろいろ相談にのってほしいヒト、いかがですか?


一泊 二千九百五十一円から!


電話番号: 29451-29451


二十四時間営業!


※決していかがわしいお店ではありません

※いかがわしいサービス提供の強要はお断りします

────────────────────


といった内容が書かれていた。読んだ後に、武雄はあの年若い青年のことをまた思い出し、




あのときの……これの宣伝だったのか。




と、ようやく理解に至る。


「居候、なあ。知らんやつが住むってことだろ?」


武雄は思わず怪訝けげんな顔をする。この広告を読んだものは、本当はいかがわしい店なんじゃないか、これは信用できるところなのか、詐欺ではないか、という心配や見知らぬ人が家に住む抵抗感、というものを武雄だけではなく誰しもが抱くに違いない。


「だが……」


武雄は、背後にあるタンス上の写真立てを見やり考える。この平屋には武雄という男ひとりしかいない。広い平屋にたったひとりきりで住み続けるのは寂しいと武雄は感じていた。さらにいえば、家には盗まれても困るものもない。


「もしもし、ポケットティッシュの広告を見たんですが……」


気づけば武雄は、携帯電話を手に取っていた。武雄の中で怪しさや抵抗感といったものよりも寂しさが圧倒的に上回っていたのである。


『もしもし、こちらは"居候屋"ですが? ご利用でしょうか?』


その声は、あの年若い青年を彷彿ほうふつとさせた。



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