第20話 デモンパレス

 魔王に案内されアースたちはデモンパレスと言う名の集落を歩く。


「……人間だ……人間が来た!」

「魔王様なんで人間なんかと……!」

「つ、捕まったのか!?」


 どうやら魔族はアースを見て人間が来たと思っているようだ。


「アースよ、その姿どうにかならぬか? 町の者らが覚えてしまっておる」

「う、う~ん……。ちょっと待ってくれる?」


 そう言い、アースは人化の術を一端解除した。


「「「「り、竜だぁぁぁぁぁっ!? 大地を死の大地に変えた極悪竜だぁぁぁぁぁぁっ!!」」」」


 そう叫び魔族らは一斉に家の中へと消え去った。


「……なんかすんません……。犯人は家の両親っす……」

「くくくくっ、愉快愉快。さあ、そこからどうするのじゃ?」


 アースは人化の術について考察する。人化の術は人型に変化する術だ。なのでイメージ次第では魔族の姿に似せる事も可能なはず。アースは魔王たちを観察し、魔族の特徴を頭に叩き込む。


「とりあえず頭に角生やして……背中に翼を生やせば良いのかな? あぁ、尻尾も出しても良いか。よし、決まった。……人化の術!」


 アースは頭の中に魔族に似せた姿をイメージし、その姿を変える。頭からは岩の角を生やし、背中からは岩の翼を生やし、尻尾も竜の姿の時の尻尾をそのままに生やす。髪は長めの茶髪で口には竜の牙を生やす。


「ほうほう。中々に魔族らしい姿になったの?」

「そうかな? フラン、どう?」

「私は前の方が……。あ、でもこっちも悪くはありません!」

「……二人の時は前の姿にするよ」

「……すみません」


 しかし正体が竜とバレてしまったので魔族は誰も家から出て来なかった。


「嫌われたのう?」

「……これからの働きで取り戻す!」

「くくくっ、頼むぞ?」


 それからアースは魔王に城と呼ぶにはあまりに小さい平屋に案内された。中も見た目通り簡素で、雨風をしのぐためだけにあるような建物だった。


「ではアースよ。獲物を出してくれ」

「あ、うん。庭でいいかな?」

「うむ」


 アースは家の前にある地面に魔族が狩った魔物を出した。それを魔王と一緒に来た魔族が切り分け、各家に持っていった。


「ふむ。ではこれからどうするか中で話そうか」

「そうだね」


 アースは家の中に入り、魔王とこれからどうするか話し合う事にした。


「さて、まずは何をどうする」

「それなんだけどさ、ちょっと俺に考えがあるんだ」

「考え?」

「うん。俺は地を司る竜。死の大地を復活させられないか試してみたい」

「死の大地を……復活……? はははは、それは無理じゃろう。大陸の半分は死の大地じゃぞ?」

「いや、いきなり全部は無理だから少しずつさ。でもまずは死の大地ってのを調べてみないと」


 魔王は呆れた様子でアースを見た。


「ふん、まぁ好きなだけ調べれば良い。ただし、自分の食い扶持は自分で何とかするのじゃぞ?」

「あ、それなら心配ないよ。ストレージに山盛り入ってるからさ」

「ほ~う。ま、何にせよ人間が攻めて来るまでは好きにせい」

「了解」


 時刻は夕方。アースは早速森に近い死の大地へと向かい、地面を調べた。


「う~ん……」

「どうです?」


 アースは土を手にする。それは黒い砂状のもので、土と呼べる状態にはなかった。


「高温で何もかも粉砕されたんだろうなぁ……。これじゃ穴を掘ってもすぐに埋まるし、底がどこにあるかもわからない」

「やっぱり無理です?」

「いや、無理ではないかな。この黒い砂の下に地面がちゃんと存在しているはずなんだよ。もし地面がないなら今頃この星ごと死んでるだろうしね。まずはこの砂を除去してみよう」

「え?」


 アースは空に浮かび上がり、地面に向かって真っ直ぐに土魔法で柱をさした。


「あぁぁぁぁぁぁっ!」


 柱はどんどん砂に埋まっていき、やがて硬いものに当たる。


「やっぱり。底まで一キロってところかな。よし、どんどん柱をさして行こう! はぁぁぁぁっ……らららららららららっ!」


 地面にどんどん柱が突き刺さっていく。柱はやがて四角いプール状になり、砂の大地を囲んでいった。


「うん、これで良しっと」

「アースさ~ん! どうするんですか~!」

「まぁ見てなって」


 アースは囲った中の黒い砂をストレージへと取り込んだ。


「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」


 ストレージは無限に入る。しかもそれはアイテムごとにわけられているのか、お互いに影響しあう事もない。しかも砂なら後で使い道は山ほどある。


「は、柱の中身が空っぽに!? 何がどうなってるかさっぱりですっ!?」

「あはは。さあ、ここからはフランの出番だ」

「え?」

「フランの精霊魔法、大地の精霊から力を借りてこの柱の中に栄養のある土を溜めていこう」

「大地の……な、なるほど! わかりました!」


 柱の中身は一立方キロメートル。これをフランの精霊魔法で埋め、大地を復活させるのがアースの考えだった。大地が砂の状態だから沈むのであって、そこを埋め立てたらなんとかなるのではと考えたのであった。


「……大地の精霊よ……。我にその力をお貸し下さい。【アースクリエイト】!!」


 フランの両手から土が放出される。


「よし、じゃあ俺は上から圧し固めていくよ。【アースハンマー】!」


 それから連日その作業を繰り返す事三ヶ月。ようやく一キロ四方の大地が完成した。


「な、なん……じゃと……? だ、大地が……ふ、復活しておる!?」

「やあ、リリス。どうだ?」

「どうだって……。い、いったい何をどうしたらこうなったのじゃ!? 妾には理解不能じゃ!?」

「ははは、これからゆっくり住める土地を増やして行くからさ。じゃんじゃん繁殖しちゃってよ」

「は、繁殖って……。この助平がっ!」


 こうして、アースは死の大地復活へと取り掛かるのであった。 

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