せがむ君が愛おしい。
高校に入り、仲良くなった俺たちは、部活が休みの日に一緒に帰った。
俺たちの最寄駅は違った。
2人とも、ドアにもたれかかりながら、話をした。君の最寄駅に着くのはとても早く感じられた。
「ねぇねぇ、ここで降りてよ」
「一緒に降りてよ」
君はいつも、そう俺にせがんだ。
「そうしたら、もっとたくさん話ができるじゃない!」
2人とも、冗談なのは分かっていた。なぜなら、そう言うのがお決まりっぽくなっていたから。
それでも、それでも。
上目遣いの、君のその瞳を見ると、俺は胸が苦しくなった。
あぁ、今日も、俺にせがむ君が愛おしい。
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