小説に取り憑かれた男の子

最近、気づいたことがある。


僕は「小説を書く」ということ以外に興味が無くなってしまったんだと。


この目に映るもの、この耳に聞くこと、気づかないうちにすべてが小説を書くための「材料」に繋がっているんだ。そして、思いついた小説を忘れないように早く、早く書きたい僕は、食べることも寝ることも必要最低限しなければならないことも放っておいて、それに専念してしまうようになった。他のしなければならないことに集中することが出来ない。


なにもかも曖昧に終わらせて早く、早く書きたいんだ。

いや。待て待て。違う。僕はちゃんと勉強したいんだ、なにもかも曖昧に終わらせたくないんだ。


人に話しかけられても、聞いているふりをして、小説のことを考えている自分がいることに気づいた。


違うんだよ。僕はちゃんと聞いている。聞いているんだ。聞きたいんだよ。なのに、なのに頭は小説のことばかり考えるんだ。大切な人の話でさえ、僕は聞くことが出来なくなった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る