エピソード24


 宿を出て街を歩いた。ヨーロッパ風の街並みだった。ここで合ってるよね?と紅茶店の前で止まった。


ベルを鳴らし、待っていると……


「いらっしゃい」と昨日の人が。


店内はいつもと変わらず、心地良い室温だった。


 面接をする為、椅子に座った。テーブル席の椅子だ。対面して明るい女性が座った。大人しそうな女性は今日はお休みらしい。


「私はマーフィー。よろしくね」


「私は木林森子です。よろしくお願いします」


軽く自己紹介した。


「森子ちゃんね。転生者かしら」


「はい」


「こういう仕事は初めて?」


「はい!でも頑張ります」


誠意と気合いを示した。


「早速だけど、場所案内するわ」


そう言われ、場所を説明された。ここで働いている人は17人らしい。結構いて、吃驚した。紅茶の種類も教えられたが、沢山あって間違えそうになった。だけど、間違えても大丈夫らしい。怒られる事も無く、お客さんも親切だそうだ。


「なんで、この仕事を選んだの?」


「戦闘に向いてなくて……」


そう伝えるとマーフィーさんはうんうんと頷き、納得の表情を浮かべた。


「そういう人、多いわよ」

「働く気があって、もふもふ好きなら採用して今日から働いてもらうわ」


「えっ、いいんですか!?もふもふ大好きです」


驚いて気づいたら立ってて、固まってしまった。


 そんなこんなで今日から働く事になった。


午前10時を過ぎ、人が増えてきた。というのも店員が増えたのだ。面接は朝早い時間と言われていたので、早めに来ていた。そういうことだったのか、と気づかされた。男の人もいて戸惑った。2人男性で6人女性。マーフィーさんと私含めてだ。

多分、今日この時間だからだと思った。なんてったってシフト自由だから。


 こちらに手招きされて、ドアの前へ。


「いらっしゃいませ!」お手本通りにやってほしいと言われた。


「いらっしゃいませっ……」精一杯の声を出したつもりだったが、小さい声だったようだ。


「声小さいわ。もっとお腹から声を出さないと」と指摘、注意されてしまった。


「いらっしゃいませ!!」


「良いわね。そんな感じで接客よろしくね」


えぇーっ、接客!?この私が??


指示無しで、分からない事は聞いて後は全部自分で頑張った。一人で任せても平気らしい。ミスしても周りがカバーするから大丈夫だからと言われた。


 出来上がった紅茶やサンドイッチ、ランチセットなどをお客さんのいるテーブルまで運ぶお仕事。最初は慣れなかったけど、段々楽しくなってきた。お客さんの笑顔も見れた。見慣れない顔だけど、気に入ったと言われた。


「その調子!初めてなのに凄い」


他の同僚からも褒められた。嬉しい。前世では褒められる事がほぼ無かった。他の人のノルマを手伝ってもお礼を言われる事も無かった。そして、段々つらくなって……倒れたんだ。


「ありがとうございます」笑顔で礼をした。


「崩し口調でいいわよ」


崩し口調とはタメ口の事か?


「はい」全然タメ口になってなかった。


「このもふもふ達は癒物なんですか?」


「それは借りてきてる癒物。購入したといってもいいわね。お触り放題よ。好きに触っていいからね」


早速もふもふに触れてみた。毎日のデイリーミッションもあるんだった。


「もふーっ」


今、喋らなかったか?まあいいや。


人間の髪の毛みたいな毛をした犬の癒物に触ってみた。


気持ちよさそうにしている。ゆったりと身体を伸ばしているように見える。


デイリーミッション報酬も受け取っておいた。


「次回は紅茶のれ方について教えるわね」


その声を聞き、「分かりました」と威勢よく返事をした。






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