戦闘不能森子

エピソード18


 オズさんと紅茶を飲みながら談笑していると背後から気配がした。


「やあ、オズ。久しぶり。元気だった?その子は帝国で噂の転生者?それとも彼女?」


「って兄さん!?久しぶり。ああ、この子は転生者だよ。俺はいつも元気だから心配いらないよ」


(お兄様!それに噂されてたの?)


 そのオズさんのお兄さんというのが赤茶髪で顔が完全に戦場を駆け巡る軍人のように凛々りりしかった。瞳はオズさんと同じ青色だった。オズさんには似てないが系統が違うイケメンだった。何故私はこの国に来てからというものイケメンとの遭遇率が高いのだろうと日々思う。


「初めまして、こんにちは。私は木林森子と言います。オズさんにはいつもお世話になってます」


「初めまして、森子ちゃん。私はアルドと申します。よろしく」


「森子“ちゃん”はないだろう。木林さんと呼びなさい」


オズは呼び方に厳しかった。正直、森子的にはどちらでもいいらしい。


「どっちでもいいですよ」


「ほら、やっぱり~」


「オズはシャイ過ぎるんだよ。もっと女性に積極的にならなきゃ」


「兄さんは遊び過ぎだ。任務に行け」


オズは怖い顔をしてアルドを見た。


「それより、オズさんの飲んでる紅茶が気になります」


「ああ、この紅茶はダージリンティーだよ。町のカフェで売ってる」


「苦い紅茶がお好きなんですね」


「いや、そういうわけでもない。甘いのも好きだよ」と否定された。


気付くとアルドも何かを飲んでた。


「何、飲んでるんですか?」


「コーヒー。しかもブラックの」とアルドはカッコつけた。


「気にしなくていいよ。いつものことだから」とオズは付け加えた。


その二人の様子を見て私も何か飲みたくなった。


だから「私も何か飲みたいなー」とふと呟いた。


そしたらオズさんが「何、飲みたい?」と聞いてきた。


それに対し、「ベリーティーをお願いします」と言った。


オズが“フェアリー サークル”と唱え、紅茶が入ったティーカップが出てきた。


「はい」と渡され、お礼をした。


「オズはオズの魔法使いと言われるほど、魔法の技がけていて魔法学校にも11才くらいの頃に通ってたんだ」とアルドは言った。


「それは別作品。あと人の年齢はこの国に存在しない」


「はいはい。見た目ね、見た目」


「森子ちゃんはもう一人で戦っていいんじゃない?」とアルドは提案した。


確かにそうだ。森子は今までレノ、カインと共に戦ってきた。戦いに慣れ、勝てば弱くても強くなっていくし、あとは森子の操作に託される。


「確かに兄さんの言う通りだな。だけど一人で大丈夫かな……危なっかしいというかなんというか」


「私、行ってきます!その戦いというやつに。弱くても何とか頑張りますのでご心配なく」


オズは心配そうな顔をしている。アルドには行ってこいという感じで肩を叩かれた。


「この前は下僕が用なしで申し訳なかった。心配だけど行ってきな」と背中を押された。


「それより、後ろの人達……」


「あ!」


馬車から降りてそのままにしていた。レンガ造りの建物の裏という目立たない場所だからいいと思ってたが、そうではなかった。


「きゃーーー」響く歓声。女性達は押し寄せている。


「まあ、貴族ランキング不動の1位だからな」


「私は2位」とオズは言う。ちなみにシルクは4位だ。


「じゃあ、行ってくる。後は頼んだぞ」とアルドは馬車に再び乗って遠くへ消えていった。


「前に教えた通りに頑張って。初心を忘れずにね。戦いに慣れれば弱くても強くなっていくし、大丈夫だから。心配だけど行ってきな」


オズさんは不安を募らせながらも私を見送ってくれた。







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