冒険へと再び歩きだす

エピソード12


 オズさんに言われた通りにカインと案内されるがまま、探索していた。


「僕は騎士団員で、ガイド役をしてるのさ」


「知ってます」冷静でストレートに吐き捨てた。


「へ?」カインは吃驚した様子で唖然とした。


「僕の名前はカイン。よろしくね、これも言ってたっけ?」


「言いました」

「大丈夫ですか?」私は心配になった。


毎日、これを聞かされるのかと思うと不安になってしまった。


(癒物って記憶保持ができないの……)


「医務室でのこと、覚えてますか?」と私は聞いた。


「あぁ、あ!思いだした。ぼんやりとだけど」


「よかった……」と私は胸を撫で下ろした。


 ここはドゥカドゥカの森というらしい。カインが教えてくれた。あの夢の国といわれるテーマパーク2個分の広さはあるだろう。そう私は思った。レノと歩き回った場所もこの森だ。森だから当たり前だが、どこもかしこも木と葉で埋めつくされている。沢山の癒物や動物、モンスターが生息しているらしい。


と、歩いてると何かが落ちてきた。


「危ないっ!」カインが半ば抱きかかえるかたちで庇ってくれた。


「どんぐり……?」


「みたいだな」


大量のどんぐりが落ちてきた。その上にいるのは栗鼠リスに見えた。どうやら、この栗鼠がどんぐりを落としていたようだ。敵のように思えるが、敵ではない。


木の上から降りてきた。


「あ、可愛い」


毛づやの良い栗色と黒色の毛と愛くるしい尻尾が特徴的だ。触ってみるともふもふしていた。くりくりしている丸い目も可愛い。


「これ、癒物じゃないかな?」とカインは言った。


「癒物……それなら……」


「いいよ。森ちゃんの癒物にしても……それに癒物が癒物を飼うことは出来ないからね」


(森ちゃん?)私は首をかしげた。


「やっぱり癒物が癒物を育てるのは不可能なんですね。納得です」


「不可能では無いけど育たないよ」とカインは言った。


「癒物と旅するなんて不思議だな……」ふと口ずさんだ。


そう、今私は癒物と冒険している。


猫耳と猫尻尾のついた青年は私のほうを振り向いた。


「そういえば何歳なんですか?」


「19歳です。ピッチピチの!」カインは威勢良く答えた。


20歳以下とは実に意外だった。癒物も人になったら歳取るんだ……。


「私は36なんですけど」


「「随分離れてるね……」」二人で同時に喋った。そして笑った。


 支配者Aに渡されたスマートフォンで早速、癒物を調べると名前は“ソヨーテ”というらしい。


コリーナに見た目も名前も似ている。栗鼠のような容姿が似ている。姉妹なんじゃないかと思う程だ。


カインとソヨーテと数時間歩いていると森じゃない場所に辿り着いた。ん前には巨大な岩だ。岩でできた崖のようだ。


その下には穴が空いている。


「森ちゃん、こっちおいで」


カインに言われるまま、「はい」と言ってしゃがみこみ、匍匐ほふく前進していった。


 その洞窟は大人の女性と若い細身な男性が一人入れるくらいの狭さだった。同時には入れない。


中は暗く、入って先へ進むと一気に広くなった。溶岩みたいなものが流れている。


「ソヨーテは癒物の控え室に仕舞っておいたほうがいいよ。危険だから」とカインは言った。


「分かった」と言い、Yキーを押し、そのまま癒物控え室に仕舞い込んだ。


私はカインの進む道のりについていった。

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