エピソード10


 私は思った。(なんでレノさんが剣で私をぶったろうとした時に茶髪の青年がいきなり現れて庇ってくれたのだろう)と。


「あの、茶髪の男性さん。お名前は?」恥ずかしながらも聞いてみた。


「あ、自己紹介まだだったね。僕はカイン。さっき、消えていっちゃったレノと同じこの国の騎士団に所属してて、ガイド役をやってるよ」と茶髪の青年・カインは自己紹介した。


「レノさんはガイド役だったんですね、やっぱり。騎士団に所属……ほう」と私は納得した。


「でも、なんでいきなり現れたんですか?さっきまで何処どこにいたんですか?」と聞いた。


「ああ。それは……」


「こいつは私の癒物でね。幽霊のように姿を消すスキルを持ってる。霊体化っていうんだけどね」とオズが説明した。


「ゆ、癒物!?」私は吃驚しすぎて言葉を見失ってしまった。


「育ち過ぎたらこうなった。ただそれだけ。」オズは簡単そうにこう言うが、癒物Lv、親愛度を最大まで上げて、人型のレプリカ(透明な自我の無い人体)と組み合わせないとこうはならないらしい。


「じゃあ、私達が話してる間から居たって事だね」


「まあ、レノの殺気には気づいていたから。でも医務室では剣の力も発動しないし、僕が守ったお陰で結界ができたから森ちゃんは無傷で済んだ」とカインは自信満々に告げた。


「ああ、その節はありがとうございます」と私はお礼を言う。


「じゃあ、うちの駄犬だけんをよろしく頼むな」


「ちょっと待って下さい!」


「せ、せせ、せんぱーい。駄犬じゃないし。僕、猫だし」


「二人同時に喋るな」オズが制止する。


「お前を後輩と認めた覚えはない。まず、お前は人前では耳隠せって言っただろ。それに猫らしく無いし。俺の育て方が悪かったのか……」自信無さげにオズは言う。


「そうだ、そうだー!」


「うるさい奴め」


「で、木林さんは私に用かい?」


私は軽く会釈をしながら、「オズさんって本名がオズウェルさんって言うんですか?」と聞いた。


「ああ。そうだ。オズウェル・マルティネス・アルウェイン第14世。長いのでオズって呼んで下さい」とオズは答えた。


「あーああ」すごい人もいるもんだと遠くを眺めるような目で見ていた。


「取りあえずまあ、カインと冒険に出て欲しい。レノの時と同じように」とオズに任務を命じられた。


そうして、カインとの長旅が始まったのであった。

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