【オンライン】248話:ハロウィン(4)




 もう何て言うか……お祭りを全力で楽しんでいる自分達にちょっとドン引きである。場の雰囲気に流されて、普段では絶対に着ない服を着ている。


「なぁ、なんで俺達はこんな格好をしてるんだろうな」


〈知らないよ。何時の間にか乗せられて着てたんだから〉


「見て~、ボクの衣装もあるんだよ。可愛くない」


 悪戯猫をイメージした衣装で、二股の尻尾で耳もぴょこぴょこと動いている。


「なんで巫女服なんだよ、ハロウィンだよな?」

「あら~、妖怪を倒すような子も居ないとダメじゃない」


 ティフォの衣装は袖が分かれていて、肩と脇が露出している。


 巫女服といっても色は白と赤ではなく、黒を基準として帯なんかは紫色になっている。スカート丈も膝までで、可愛らしい草履を履いている。


 僕等はミカさんとアズミルに騙される様にして、ケリアさんのお店の中へと誘われ、生贄の様に色んな人達から、衣裳部屋へと誘導されていったのだ。



 ==数分前。

「あらいらっしゃい! 来てくれると思ったわ~。ささ、入ってって~」


 なんか周りの屋台よりも少し大きめの場所をとって、かなり大きめのテントには様々な衣装が並べられている。広く場所をとっている理由はちゃんとあるみたいで、青いテントが男性用、赤いテントは女性用ということらしい。


 確かに、男女は分けて置かないと、ゲーム内の住人達が着替える場所が無くなってしまう。


「待ってくれケリアさん。俺は男なんだぞ、女子用のテントに入る訳にはいかないよ」


「それなら大丈夫よ~。衣装を見るだけなら別に平気よ~。着替えは隣に並んでいる小さいテントがあるでしょう、あっちは流石にダメだけどね」


「ティフォっち場合、女物の装備じゃないと着れないんだからさ、男物の服なんか見ても仕方ないって。一緒に女物の服を見よう」


〈見るだけだから、大丈夫でしょう〉


 渋々といった感じで、乗り気のしない僕とティフォは皆に背中を押される様にして、赤色のテントへと押し込まれてしまったのだ。


「やっぱり、どの衣装を見ても女子が着る服って色々と数が多いし、着るにしたって大変そうなのが多いよな」


「そうかな、慣れちゃえば気にならないよ? コレなんかティフォナんに似合いそうだよ」


 アズミルがメイド服を持ってきて、ティフォの体に宛がってみる。


「スノーちゃんにはこっちが似合うかな」


 ケリアさんのお店に来てから、ミカさんとアズミルが生き生きと動き出した。


「拙者、外に出てるんだな。近くに幽霊が隠れている可能性もあるでござるしな」


 そう言ってガウは僕等の声を聴く前に素早く逃げる様にテントから出て行ってしまった。


「やろう、絶対に逃げやがったな」


〈だね。此処に入ってから一定距離を置いてタイミングを見て後退気味に移動しながら踵を返したもん。でもまぁガウの言っている事はあり得るし、引き留める理由が無いんよ〉


「鮮やかな逃げ足だったね」


 そんな事を考えている間に、近くの机の上には何時の間にやら、数十着もの衣装が置かれていたのだ。ケリアさんも混じって、キャピキャピと衣装の話について盛り上がっている。



 そこからはもう「せっかくのイベントなのに、楽しまないなんて勿体ない」とか。

 「此処はゲームの世界だよ。なりきったり恥ずかしさを捨てて全力でオシャレしないと」なんて言葉が次から次に飛び出してくるのだ。


 後はもう圧力と言うか、迫力というか……女性の熱意と口の上手さにティフォが乗せられて、僕は皆に逃げ道を塞がれて着せ替え人形の如く、色々な衣装を着せられた。


 ちなみに、僕の恰好は白いレースの服を基準としたお姫様みたいな服装になった。

 ただし、少し魔法少女っぽくアレンジされていて大きなリボンが腰回りに付いている。




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