【オンライン】195話:始まりの頃から変わった町並み




 グランスコートに向かう途中でクリアー出来るような、簡単なお使いクエストを幾つか受けてから出発する事になった。


「あら、貴女がスノーちゃんかい。ダイチさんによろしく伝えといてくれよ。こっちにある肥料を届けて欲しいんだ。量が多いからね、ちょっと困ってたんだよ」


 さっき見つけた花屋さんからの依頼で、小さな倉庫一杯の肥料を渡された。


「やっぱりファーマーとやらは便利さね。コレだけの荷物を運べるんだから」


 ただ触れて、インベントリに入れただけで目の前からパッと手品の様に消える。


〈農家の人達に配れば良いんですね〉


「あぁ、頼んだよ。それからさ、貴女を見込んで頼みが一つあるんだよ。精霊様や妖精様が居るって言うからね。この花を育ててみてくれないかい、妖精華っていう花が咲くらしいんだけどね。此処じゃあ育たないんだよ。精霊様と友達で妖精様を連れているなら、育てられると私は見てるんだ」


 鉢植えに植えられたであろう妖精華は、少しだけ若葉が生えた後があるけれど、すぐに枯れてしまったようで、土も葉っぱもカラカラに乾ききっている。


「水をあげなかったって訳じゃあないんだよね」


 シュネーは枯れた若葉や土を突きながら詳しく話を聞く。


「そりゃあそうさ。他の鉢植えみたいな土だったんだよ、でも芽が出てすぐにこうなっちまうのさ。原因がサッパリ分かんなくてね。花屋としては妖精華をね、見てみたいんさ」


〈分かりました、上手く育てられるよう頑張って見ます〉


 僕がそう言うと、萎れた花が元気に咲いたみたいな笑顔を見せてくれる。


「それで良いさ、難しいことを言ってるのは重々承知してるよ。コレがタネだ、花が咲いたら教えておくれよ、すぐに見に行くからさ」


「悪いな家のが我儘言ってよ、ただ俺も見てみたいんだ。上手く咲いたらお礼は弾むさ」


 花屋の夫婦がそう言って、送り出してくれる。


「ダイチ爺ちゃんの御蔭で、グランスコート所属ってだけでこの辺じゃあ色んな事を頼まれる様になっちまったな。まぁ、印象も良いみたいだし、買い物でも安くなったり融通もかなり聞く様になったから良いんだけどさ」


 ティフォはちょっと面倒そうに言いながらも、お爺ちゃんが絡んで褒められていると嬉しそうな笑みを浮かべている。本人は気付いてないみたいだけど。


「農家も大きくなっているし、活気が出てきたわよね~」


「最初にこの辺を通った時には、使われていない畑も多かったでござるよ。それが今では何処を見てもしっかりと管理された畑に牧場が見れるんだな」


 柵も綺麗になって、白い仕切りに牧草地なんかも整備されている。

 雑草が生い茂っていた場所はもう見当たらない。


「最初の頃も見て見たかったな」


「どういう変化があったかは、地区管理の受付嬢さんに言えば見れるかも?」


「受付のお姉さんや、街のお店なんかも好感度があるって新聞に載ってたもんね」


 三人はどうやら情報収集をしていたらしい。

 ミカさんが所属している情報屋の人達が一生懸命に作った新聞を買ったみたいだ。


 彼女はダイチお爺ちゃんに話を聞いて、しっかりと裏取りしてから載せた記事は凄く反響が良いみたいで、かなりの収入になったと喜んでいた。


「グルっと見て回ったし、そろそろグランスコートに行こう?」


 何時の間にか僕に寄って来ていたムーンちゃん。


 誰にも気付かれず、そっと僕に寄り添ってきた。今まで僕から離れなかったスズメちゃんを上手く誘導したようだ。


 僕がクエストを受けていたというのものあるけど、スルっと間に入り込んできたな。


〈ちょっと待っててね、馬車で移動しよう〉


 この辺りの農家から受けたクエストがある、腐葉土をエーコーさんの森から運んで来なければならないと言うもので、どうしたって荷馬車を持っていかないと運べない。


「コレはボク等じゃないとダメだからね~、お邪魔虫は先に行ってても良いよ」


〈も~、シュネーってばそう言う事は言わないの〉


 なんか三人が来てから、シュネーが少しだけピリピリしている気がする。




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