【オンライン】157話:イベント騒ぎは大騒ぎ
あの後すぐにイラグさんは工場に籠ってしまった。失敗作にはなってしまったようだけれど一歩前進だと言って高いテンションで終始笑っていた。
ミカさんも新しい錬金アイテムを見回し、小さく笑っているのが不気味だ。
ティフォは服も乾き、纏っていた布をインベントリに入れて洗って返すらしい。
〈ねぇティフォ、衣服とかが濡れると何かデメリットがあるの?〉
「あるぞ、重量が倍になるからな。重さを感じると動きが少し鈍ってるって感じだ」
「インベントリにあるのは無事なんだよね?」
「あぁ、そっちは問題ないよ。水に直に使った訳じゃあないからね」
〈……なるほど〉
でもなぁ、ジャンシーズって海や湿地帯なんかの水が多い地方って聞いた。
水系のトラップなんて効くのかな? 装備にも防水能力が付与されてそうだ。
〈ミカさん聞きたい事があるんだけど〉
「何かな?」
〈錬金アイテムって水を油に変えるみたいなのって、ない?〉
「流石にそういうのは無いかな~」
まぁ、だよね。そんな簡単な話は無いよね。
「水だけじゃあなくってさ、水属性と何か別属性を混ぜる事は出来ないんですか?」
「属性を?」
「水と火で熱湯状態にしたりとか、水と土を混ぜて泥にちゃうとか」
確かに前に風水術で泥沼を作っていたような気がする。
ミカさんんも何か思い当たる点があるのか「あ~、なるほど」と呟き、考え込む。
膨張する水玉の使い方でも思い付いたのか、口端を上げて何やらニヤニヤしだした。
「確かに水だけで考えるんじゃあダメよね。錬金術師としての基礎を忘れてたよ、まだまだ未熟者って所かしらね」
ティフォと僕の肩を叩いて、お礼を言ってミカさんも工場の方へと走り出した。
「大丈夫よ、すぐに使えるまでに改良をしてみせるから。攻め込む時までにはね」
こちらを見る事無く手を振って工場の中へと入って行ってしまう。
〈火薬の方を聞きたかったんだけどな~〉
「でも今は忙しそうだよ?」
「あのテンションの中に入っていく勇気は俺には無いぞ」
〈僕だってない〉
「下手すると怒られるか、忙しいって門前払いされるかだよね~。もしかしたら、雑用係みたいな事を手伝わされる羽目になりそうだよ」
とにかく今は放置しておいた方が良い事は確かだろう。
無駄足と言う訳ではなかったから良いけどさ。
少しくらい火薬を貰っておけばよかったかな、手元にあるのはミカさんから渡された、水のキューブ一つだけだしね。しかも使い方も良く解らない代物だ。その上、試作品の危険物という、どうすれば良いか分からないモノだし。
これ以上は手に持っていたくなくて、インベントリに素早く仕舞い込んだ。
〈どうしよ、敵陣地に攻め込む手が全然思いつかないよ〉
せめて火薬があれば何か出来るかなって思ったんだけどな。
「ボスも居るみたいだしな。中ボスみたいな奴等は自陣内で倒した感じで何とかなってる感じだったもんな。聞いた話じゃあ敵陣地だと雑魚が無限に沸いて来るって言うのを根本的に何とかしないと、倒す手立ては無いんだよな」
「人は増えたけど人数に余裕は無いもんね~」
そもそもNPCを含めても非戦闘員が多く、プレイヤーさんはそんなに増えた訳じゃない。住民で戦える人はほんの一握りしか増えていないのだ。
住民と一緒に増えた魔物だって、戦闘が得意そうな魔物は一匹も居なかった。
防衛なら何とかこなせそうだけれど、どうも自ら戦う性格ではない魔物ばかり。
中隊規模を自陣に引き込んで少数で倒せたってことは、少なくとも敵陣で戦うには数倍の人が居ないと敵を倒せないと考えないといけない。
〈自陣での能力上昇効果がアレだけ強いんだから、敵陣の能力上昇も同じくらい強いよね〉
流石に効果が低いなんて事はないだろう。
「そうだな、その上にボスが居るんだ」
「ボスって、プレイヤーが束になって倒せるかってくらいに強いんだよね」
〈そこに能力上昇の効果って無理だよね。やっぱ何か考えないと〉
皆で考えてみるが、やっぱり良い案なんて思いつかなかった。
そういえば……自陣や敵陣の判定ってどうやって決まってるんだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます