【オンライン】153話:イベント騒ぎは大騒ぎ




「石畳の道? なぜ?」


 イベントが始まる前まで作っていた途中の道を見て、カミルさんがたちどまってしまう。


〈森の方が色々と忙しくって、途中で止まっちゃってるんですよ〉

「違うの、そうじゃなくってね」


 なんか頭を抱えて考え込んでしまっている。


「ゴーレムとお友達になったのが良かったのよ、その子達が頑張ってくれててね~」


「えっと、グランスコートにはゴーレムは居なかったと思いますが、仲間にしたんですか? 大量に? いや、そんなはずは無いですよね。職業ランクで考えるなら仲間に出来て二体……ティフォナス様と合わせても五体までが限界です。その全てがゴーレムだとは思えませんし、既にスパイクちゃんをティフォナス様はテイム済み」


 すぐに考え込み始めてしまった。

 このままでは埒が明かないので、パニアの事を後で紹介してあげよう。


〈後でパニアの事を紹介しますよ。ゴーレムのリーダーみたいな子ですから〉


 カミルさんは物凄い目を見開いて僕をの事を凝視してきた。




 次にグランスコートの入り口まで来ると、もう驚きの声を上げる事は無く、口をぽっかり空けて僕等と集落だった場所を二度見、三度見くらいはしていた。


「何ですか、あの囲いは? ……凄いですで、私の想像を超えてます」


 防衛の為に作った塀を触りながら、塀の作りと強度を確かめているようだ。


 も見るもの全てが目新しいのか、終始キョロキョロと顔を動かしては、色々な場所を観察している。畑を耕すウサギさんに目を奪われていたり、お花の世話をしている丸っこいモフモフのハチ達を眺めていたりと、落ち着かない様子だ。


「凄いですね、良好という訳でも無いのに色々な事が回っています。賑わいも良い感じですし、なんとも不思議な感じですね」


〈ティフォやケリアさん達が色々と助けてくれてますからね。一人じゃあ無理ですよ〉


 確かにモンスター達との関係は良好とは言い難い。この場にティフォが居なければ絶対に上手くやれている自身は無いね。


 シュネーと一緒になって何度も挑んでいるが、戦いで勝った試しがない。


「それでは、どの辺りに転移陣を設置します?」

〈ん~そうですね……転移陣って建物の中にも設置は出来るんですか?〉


 ただ外にポツンとあるのも、なんか違う気がするし、住民が間違えて起動してしまわないかっていう不安もある。出来れば、ちゃんとした建物中に作りたいな。


「可能ですよ。ですがその場合……ん~、どうしましょう。後々を考えるなら少し凝ったモノを造って頂けると、ちょっとした特典みたいなものを、お付けしますよ」


 人差し指を立てながら、胸を張って言う。


「特典ってなに~?」

「ふふ、それは秘密です。出来上がったモノを見てからのお楽しみです」


 どう聞いても教えてくれそうにはないようだ。


 転移する場所って事で、他の建物とは見た目とかも別物で作った方が良いだろう。


 土属性の魔法を使えば重機なんか無くても神殿っぽい建物ぐらいは作れそうだし、ゴーレム達の力を使えば何とか作れるかな。


 外観だけ作るなら別に時間も掛からないだろうし、内装を凝らなければいけるかな。


〈イーゴさんとボウガさんに相談かな。ケリアさんはちょっと手伝ってくれますか。イメージを伝えやすくするために、絵と設計図を作りたいので〉


「良いわね~、オーケーよ。じゃんじゃん頼ってちょうだい。どんなモノを造るのか楽しみで仕方ないわよ。大まかなイメージは何かしら?」


 ケリアさんはすぐに描くモノとインクを取り出し、僕の隣に座る。


〈そうですね、ギリシャ神殿みたいな外観にしようかと思います。大きさはかなり小さい感じの建物になりそうですけどね〉


 軽く外観イメージを描いてみせるが、何と言うか僕には絵心は無いのでどうも伝わりにくい気がしてきたな、どうしよう。


「なんか日本の教会とギリシャ神殿を混ぜた感じになりそうだね」


 ティフォが横から覗き込んで見ていたみたいで、ポツリと言われてしまう。


「ボクは見た事がないからな~、良く解んないよ」


〈ログアウトしたら検索したら良い。ティフォの言う通り、足して二で割った感じの絵になってるしね〉


「あらあら、良いじゃないのよ。素敵よ~、なんだったら教会みたいに使うって手もアリなんじゃないかしら。孤児院みたいな感じの建物だって今後は必要になるかもだしね」


 意味深にケリアさんが言うと、それに反応するようにカミルさんが「あ~」と声を上げた。彼女にも何か心当たりがあるのだろう。


「各地で起きている異変でこちらに流れてくる人が増えそうなんですよね。今の所、被害が無いのはグランスコートだけなんですよ。フォレストヒルやジャンシーズはかなり被害が大きくなっちゃってるみたいです。ヴォルマインは押し返しましたが、あそこは渡り人と住民達の間に壁がありますからね~」


「どうもその噂が中央都市から広まってるみたいなのよね。後はダイチさん達の手腕かしらね……どうも、下町の雑用クエストとかを受けてるみたいで、かなり此処の評判が上がってるのよね。小鬼のクエスト処理の時にかなり印象良くってビックリしちゃったわよ」


 お爺ちゃん達はいったい何をしたんですかね。

 長い時間インしてたってのは、何となく想像が出来るんだけど。


「爺ちゃん達がよく暇を見つけてはインしてたみたいだが、防衛だけじゃなくって、クエストもこなしてたのかよ」


「こんな事態ですから、森なんかの野草が手に入り辛いみたいでして、そういったクエストを率先して受けて下さるですよ」


「お爺ちゃん達の事だからさ、中央都市を散歩して仲良くなった人達から頼まれた事とか、率先して手助けしてそうだよね」


 確かにと、僕を含めて皆で頷きあってしまった。


「そう言う事ですので、頭の片隅にでも覚えていて損はないかと思います」


 その話が本当なら人手不足はすぐにでも解決しそうだ。

 けど、人が増えたら増えたで困る事が多くあるんだよね。



 まだ金策だって出来てないのに……どうしよう。




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