【オンライン】151話:イベント騒ぎは大騒ぎ




「ほら見て下さいよ、ポイントなんて一万も溜まってるんです」


 僕の手を右手で掴みながら、片手だけで色々なモノを取り出して見せてくれる。


「なに少し盛ってるのよ、溜まっているポイントは8,500くらいでしょう」


「ブーブー、良いじゃないですか千とちょっとくらいのオマケしたって。アンさんは固いんですから、こういうのは柔軟にですね――いった~い」


 また脳天チョップをくらわされている。


「私の方が先輩なんですよ。まったくこの子は」

「うぅ、ごめんなさい」


 そんなやり取りをしながらも、僕の手を離さないあたり凄いと思う。


「ほら、ちゃんとお話を聞きなさい」

〈あはは、えっとですね。森との転移陣を繋ぎたいんですけど〉


 何故かポカンとした表情で二人が僕を見てくる。


「えっと、此処の利用はまだ二回目だと思うんだけど……え? 森の管理者様と仲良くならないと転移のクリスタルはもらえませんよ?」


〈持ってますよ〉


 掴まれた片手はそのままに、右手でインベントリを開いてエーコーさんに貰ったクリスタルを取り出して、二人に見せてあげる。


「コレは、緑の泉と同じクリスタルですね」


「本物です。凄いですよスノーちゃん! こんなに早く転移陣を開けるなんて。流石は私のお気に入りの子ですよ。では早速準備に取り掛かりま――痛いです」


 暴走しそうになっているカミルさんの頭をハリセンで叩き倒して、止めてくれる。アンさんはため息交じりに呆れながら、僕に補足説明を開始してくれた。


「えっとね、ポイントは3,000掛かるのだけれど、良いかしら?」

〈はい、大丈夫です〉


 確か八千と五百くらい溜まっているって、さっき聞いたしね。


「森は近いので、三千のポイントです。距離によっては五千、更に遠くに繋ぐ場合は一万という感じで必要ポイントが変動します。その辺はご了承くださいね」


〈なるほど……わかりました〉


「ふふ、賢い子ですね。それで転移先の管理者に気に入られると、その場所で開拓が出来るようになったりします。その場合も同じグランスコートで井戸を作る際に必要だったポイントを仮に100とした場合、転移先で同じ規模の井戸を作るとなると500必要になりますので、ご注意ください」


 カミルさんよりもしっかりと説明を始めてくれた。流石は受付の先輩だ。

 そして本来は説明をしなければならないカミルさんはというと。


「スノーちゃんの事だから、もう森の泉の管理者さんと仲良くなってたりしてね」

〈そうですね。エーコーさんとは仲良くさせてもらってますよ〉


 そう言うと二人は驚いた表情でまた固まってしまった。


「ね、ねぇ。そのクリスタルをもっとよく見せて貰えないかしら」


 アンさんが少し震えた声で言う。


〈良いですよ〉


 良く解らないが、アンさんに持っていたクリスタルを手渡す。

 すぐに何か能力を使ったのか、アンさんが手に持った瞬間に小さく手元が光って見えた。


「ねぇねぇ、さっきのは?」


 後ろにいたシュネーがティフォに聞いている。


「ありゃあ【鑑定】だな。受付嬢さんだし持っていても不思議はないだろう、というか必須スキルじゃないかな、多分だけどな」


 なるほどね、確かにそう言った能力を持っていても不思議じゃあないね。


「本当に管理権限が可能になってる……なんで? そこまで一気に好かれたのかしら」


 それから考え込む様にして一人ブツブツと思考に入ってしまっている。


「あ~、先輩の悪い癖が出てしまってますね~。まぁ、今回はしょうがないですが、とにかくこちらのクリスタルは一時お預かりします。後日、すぐにでもこの私が転移陣の設置に赴きますので、用事でいらっしゃらない場合は設置場所をあらかじめ決めて置いて欲しいですよ。その場所にしっかりと転移陣の小屋を設置しておきます」


 目を輝かせて、巻物の様なモノを手渡された。


〈えっと、コレは?〉


「それはですね、転移陣を設置する際に大きさや形状を疑似的に出現させるモノです。地面に置いて実際の大きさと広さを確認して頂き、しっかりと建てられる場所に置いておく……まぁ、目印みたいなモノですね。物は試しで見て頂いた方が早いですかね」


 屋根付き手押しポンプの付いた井戸の設計図が立体的に飛びだす。

 あたかもそこにある様に線画で出現する。


「こんな感じです。特殊な加工がしてあるので地面にずっと置いて放置していても大丈夫ですからご安心ください」


 確かにコレなら目印にもなるし、分かりやすいな。


〈ありがとうございます、コレを設置しておけば良いんですね〉


 カミルさんは改めて転移陣の巻物を手渡してくれる。


「いえいえ、他に御用はありませんか?」


〈今日は特にないですね、また来ますよ〉


「もう、忘れちゃダメですからね」



 最後に少し拗ねたよに頬を膨らまして、釘を刺されてしまった。




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