【閑話】ケリアと二匹の恐怖。
挑発して、すぐ取り巻き護衛の小鬼達を小隊リーダーから遠ざける為に、相手の首筋に腕を絡ませて全力で走って来たからだろう。
彼等の切り離しには成功した。
後は他の子達に託せば良いだけ。
「ふぅ~、いけないわね。可愛すぎるからって過保護になりすぎちゃあ」
心配は心配だけれど、託して任せる事もしていかなくっちゃ駄目よね。
彼等の楽しみの為にも、自分がずっと楽しむ為にも、ね。
「もう、私をこんなにした責任をとって欲しいわね。あのキルプレイヤーの子ってば」
全力で突っ込んだ分の威力もあるはずなのに、余りダメージが入っていない。
「あらあら、イベントモンスターだからかしら? それとも、何かカラクリがある?」
あんまり戦闘はしたくないのよね。
服は汚れるし、耐久度が減れば自慢の服がダメになっちゃう。
「グガッ!」
「ガガッ」
二匹が持ち出した武器は、一匹は両手杖、もう一匹が大盾だ。
「支援職にタンク、ねぇ」
挑発が効いているから此処に留まって、私を見てくれているんだろうけど。
こうなるとリーダーの固有能力がすっごい気になるわね。
それに、この子達ってばインベントリ―から武器を取り出した。
「ただ楽しむだけのイベントって訳じゃあ無さそうね」
普通の雑魚敵だったら始めっから武器を所持している。他のゲーム同様にレベル上げみたいな感じでパラメーター上げやスキル上げをしていた私はしている。
「早めにケリをつけたいわね。ちょ~っとギアを上げていくわよ」
すぐに【力溜め】からギアチェンジして、【瞬歩】へ移行、【ダブルギア】により瞬歩をギアチェンジさせて突っ込む。
相手の懐に飛び込み、『正拳突き』のギアを魔導士に放つ。
その勢いのまま、回し蹴りをタンクの脇腹にヒットさせた。
「ふふ、動きが遅いわよ」
不意打ち判定は取れなかったけれど、クリーンヒットはもぎ取った。
手応えはかなりあったから大ダメージは負わせたはずだ。
「ガーッ‼」
「フガッ」
「あ、あら? い、意外にタフじゃない」
魔導士は四分の一程度しか減っていない。盾持ちも同じくらいのダメージ。
――盾で防がれた訳じゃないなら、多分……。
「アナタ達ってば、中々にヤルじゃない」
初動にプロテクトを魔導士が掛けて、大盾の子は『肩代わり』のギアを使ったわね。
仲間一人のダメージを幾分か代わりに受けるというものだ。
本来、防御力も体力も高いタンクが魔導士と同程度のライフが減っている筈がない。
「でもね、その行動でアナタ達に勝ち目が無いってこと、分かってるかしら」
「ガガッ‼」
「フーガッ」
守りと回復系支援の魔導士。
どう頑張ってもジリ貧で、私に分がある戦いになる。
「よっぽど私がヘマでもしない限りだけど、スピードとパワータイプの私に大盾のカウンターアタックは決まらないわよ」
敵とは言えど、良い連携を見せて貰ったからか、ちょっと興奮してきちゃった。
腰を躍らせながら、一歩一歩、力強く地面を踏みしめて二匹を見つめる。
「コレで終わりじゃあないわよねぇ。楽しませてくれるかしら? ねぇ。じゃないと、お姉さんってば、じっくりねっとり、お仕置きしちゃうんだから」
「う、うが……」
「だ、う……」
「あらあら、どうしたのよ。ほらもっとしっかり立って、大丈夫、殺しはしないから」
何故か最初の勢いがない二匹に、もうちょっとヤル気を出してほしいだけなんだけど、なんかバッドステータスの《恐怖》って付いてる気がするのよね。
――不思議だわ~。
仲良くなったら可愛い服を着せてあげようかしら。
きっと仲良くなれるわよね。
皆にも出来ているんだもの、私に出来ないはずがないわ。
うふふ、今から楽しみだわ。
以外にも、小鬼ちゃんってば良い筋肉してるし、良い戦闘訓練も出来るかしら。
まずは熱い抱擁からよね、たっぷり愛してあげなくっちゃあ。
★☆★ ★☆★ ★☆★
「もう、威勢が良かった最初の方が楽しかった」
途中からなんか腑抜けになっちゃって、私の熱い思いを返して欲しいわよ。
少しだけ遊んでいたから、ちょっと時間が掛かっちゃったわね。
何故か完全に戦意喪失した二匹をロープで手足含めて縛っておく。
パーティーの欄を見れば、皆が無事だと判る。
ほっと一息ついていると、すぐ近く。
それも私が来た方向とは逆の方から戦いの音が響いて聞こえてきたのだ。
「まぁ、私達だけって訳じゃあないものね」
木陰に隠れるように進み、戦いの音が響く方へと様子を見に行く。
結構な人数が入り乱れていて、状況が掴み難い。
プレイヤーの数も多く居るけれど、それ以上に小鬼の数が異常だ。
「なによ、コレは……それに、あの子達ってばジャンシーズの子達じゃない」
敵である小鬼達の小隊が4か6グループは居る。
そのリーダー達が次々に小鬼の雑魚を呼んで、次から次に導入されていく。
雑魚だけなら上位プレイヤーが吹き飛ばせる筈だが、そこは取り巻き護衛達が上手く立ち回っていて、支援とタンクのガードで邪魔をしているようだ。
数の多さで敵リーダーには一人も辿り着けていない。
安全圏から仲間召喚や、連携指示を飛ばし、全体のバフとデバフを撒いている。
「策を立てずに小鬼と侮って突っ込んだ結果という事ね」
経験者が多く居る事の油断ってヤツかしらね。
「それにしても、あの子達が此処の攻略を任されたのね。それとも自分から志願したのかしら。どちらにしても、こっちに被害を出さない事を願うばかりね」
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