【オンライン】113話:イベント騒ぎは大騒ぎ




 無防備に棒立ちしているダイチお爺ちゃんに向かってきたゴブリンだったが、ハーナさんが作った草で結んだだけの罠に引っかかって転んだ。

 そのままお爺ちゃんがタコ殴り。


「ほっほっほ。あまいのぉ」


 棍棒で何発か頭を殴ってすぐに離れる。


「えげつないね」

〈無慈悲だね〉


 敵だけど、同情をしてしまう。

 起き上がったゴブリンが怒りに任せに暴れる。


「隙だらけでござるぞ」


 遠くから走ってきたガウが盾を構えながら突撃して、ゴブリンw突き飛ばした。

 罠に掛からない様にシュネーに扇動されながも、しっかりとダメージを与えている。


「よっとと、こっちも準備オーケー」

「よ~し、それじゃあスノーちゃんやっちまってくれや」


 ダイチお爺ちゃんの掛け声を聞いてすぐに紐を切る。

 木や蔦がきしむ音が鳴り、すぐに三本のロープで其々が繋がれた柱が立つ。

 柱と言っても、大きな御木に巻き付いてるだけなんだけどね。


「グガァ‼」


 ゴブリンが叫び声を上げてロープに突っ込むが、その位置は落とし穴だ。


「ギャッ⁉」


 あまり時間も無かったし、穴底に敷かれているのは石ぐらい。

 完璧に決まった罠でも、ダメージは六分の一くらい削った。

 小隊のリーダー格とは言ってもな。

 初回のイベントだしそこまで強い敵でもない様だし。もうちょっと時間があれば、もっと質の良い罠が作れてダメージも格段に上がったはず。

 罠の出来や規模で威力が変わる、基本的には固定ダメージと説明書に書いてあった。ただそれは相手が無防備、もしくは不意打ち判定が決まった時のダメージだ。


 防御や咄嗟に避けられれば、威力は激減してしまう。

 多少なりと動けなくなる事を期待したけれど、すぐに穴から這い出してきた。


「タフでござるな……小隊のリーダー規模がコレだとすると、総大将は想像したくないんだな。対処出来る範囲であって欲しいんだな」

「そういうのは後回しだっての、先ずは目先の事が先だぞ」


 スパイクが転がりながら自身のトゲを突き立てて攻撃して、もう一度穴へ落とす。

 背中からゴブリンが落ちたけど、今度はかすり傷程度のダメージしか負っていない。ちゃんとスパイクの攻撃と罠に落ちたダメージは別で表示されるようだ。


「こっちこっち~」


 シュネーが挑発するように飛び回っているけれど、敵は見向きもしない。


「むぅ~、なんで来ないのさ」

「そりゃあ、ヘイトがガウかダイチ爺ちゃんに向いてるからな」


 ティフォが冷静にツッコミを入れてシュネー近くに寄っていく。


「スノー姫は降りて来ては駄目でござるよ、此処にある罠のダメージヘイトの全部が姫に向かって行ってしまうでござるからな。見つからない様に隠れているんだな」


〈ダイチお爺ちゃんも一緒に作ったのに?〉


「罠の設置を手伝ったかどうかは関係ないんだな。罠の発動者に全ヘイトが向かうらしいでござるよ。罠のスキルが無ければ設置しても発動はしないそうなんだな」


 確かに、罠の所有権は全てがオレになっている。


〈大人しく隠れてます〉


 だから一緒に攻撃したいって言っても皆が「ダメ」って許可してくれないだね。

 ただ単に過保護なだけかと思ったよ。


「ガウ! 後方、左に三十。大股で四歩くらい」

「了解でござる」


 ティフォに言われた通りに強攻撃をゴブリンに一当てしてから、体をコマの様に回して大股で踊る様にシュネーとティフォの元まで下がっていく。


「そこでジャンプして飛んで来い」

「ほいさっ!」

「ナイスじゃ」


 バク宙した瞬間にしゃがんで弓を構えていたダイチお爺ちゃんが弓を放つ。

 ガウの体で隠れて飛んできたダイチお爺ちゃんの攻撃がクリーンヒットした。


「ギャッ、ガァァァ」


 ふら付きながらもゴブリンは一直線に進む。

 ブンッとオレのモニターに発動の文字が浮かぶ。


 もちろんすぐに発動させる。


 草花のガサガサと擦れる音が鳴ると、ゴブリンの片足にロープが巻き付く様に締まって、そのまま宙吊りにしてしまう。


 この罠ではダメージは無い。


「今だよ皆! かかれぇ~~」

 シュネーの一声で隠れていたウサギさん達の一斉攻撃が始まる。


 ただし、一定時間の行動は制限されて身動きが取れなくなる。

 そのままオレ以外の皆にタコ殴りにされている。

 相手のライフはピンチラインまで減った。


 最後の大暴れという感じで、持っている武器を振り回して足のロープを切って、一目散に逃げようとするところでまたハーナさんの罠ですっころび、オレの罠の範囲に転がり込む。


〈確保っと〉


 三本のロープが体全体に巻き付く様にして捉えていく。



 相手の状態に、捕縛という文字が浮かんだ。


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