第2話

 俺は欲が出てきた。もっと青春を上書きしたい。俺はまだ21歳だ。同い年の奴なんか大学のサークルで馬鹿騒ぎしてたりするのだ。

俺もやってみたい。それと可愛い彼女も欲しい。しかし、そう思ってた矢先だった。

冬頃から注意喚起されていた、新型コロナウィルスが猛威を振るい始めた。店は休業を余儀なくされ、仕事がなくなってしまった。

仕方がない。派遣で倉庫作業でもしよう。地味だなぁ。冴えないおじさんばかり。

本当だったら今頃、新人バイトを募集して大学に入学したばかりの子達が入ってくる頃だ。クソが。ウィルスのせいで全ての予定が狂ってしまった。

俺は日給を握り締め、うさ晴らしに昔よく行ってたメイドバーに寄った。

「あ!アベちゃんじゃん!久しぶりー!」カウンターに座るなり、以前よく指名してたメルちゃんが俺に気付いたようだ。

「久しぶり。店もなんか大変そうだから来たよ。あと俺のこと登真って呼んでいいよ。」俺はそう言った。

「う、うん・・・。登真くん。ほんと久しぶりだね。お仕事忙しかったの?」メルちゃんが俺に聞く。

「俺仕事辞めたんだよね。いつまでもあんな奴隷みたいなことやってらんないって。」俺はモヒートを流し込み、そう答えた。

俺が3杯目を飲み始めた頃、何だかメルちゃんは浮かない顔をしてる。俺はすかさずこう言った。

「どうした?何か飲みたいの?てか元気ないね。ここ意外と時給高くないんでしょ?俺がいいバイト教えてあげるよ。こっそりLINE交換しない?」

するとメルちゃんは真顔でこう言った。

「ねぇ。今日来てくれた時から思ってたんだけど、アベちゃんなんか変わっちゃったね。人を見下してる感じ。すごい卑屈になってる。」

俺は憤慨した。ふざけるな。陽キャになった俺のことを卑屈だなんて言いやがる。とんでもない女だ。

俺はそそくさと会計を済ませ、帰ることにした。出口まで見送るというが、拒否してやった。「二度と来ないわ。」とハッキリ一言告げて。


 翌日も、また翌々日も俺は暇で仕方がなくなった。バイトはないし、家にいてもやることがない。無駄に金を使いたくもない。

散々だ。せっかく青春をやり直せるような素晴らしいバイトに出会えたのに。時給は高いし、賄いは美味いし、みんな良い奴ばかり。

悶々としながら俺は学生掲示板を覗くようになる。ここで彼女を探すのも良いだろう。ウィルスなどに負けていられない。青春を上書きしなければ。

俺は大学生のフリをしてLINEのIDと軽く雰囲気の分かる写真を載せる。しばらくして15歳の女の子からLINEが来た。

『はじめまして!写真かっこいいですね!春から高校生だけど入学式なくなって暇なので遊びたいです!』

高1か。少し幼すぎるが、別にJKと付き合うなんて珍しくないだろう。俺は今まで中学・高校と彼女もずっといなかったんだから。

俺はすぐに会う約束をした。しかし遊べるような店も全然開いていなかった。なので、とりあえず駅前のカフェへ。

少女は写真で見るよりも幼くて、緊張からか少し震えてるようにも見えた。

「どこの大学なんですか?」少女が俺に尋ねる。ここで俺はカミングアウト。

「いや、実は学生掲示板使ってるけどフリーターなんよ。まぁ21だから春から大4の人たちとタメだね。」

少女は「そう・・・なんですね。」と微妙な反応。なんだ?緊張してるのか?何話しても会話が弾まない。子供だなぁ。

一杯のカフェラテを飲み終えたら少女は「帰ります。」と言い出す。俺は焦り、

「いや、まだ全然遊べてなくない?」と引き止める。少女は「でも・・・ 今お店とかあまり営業してないし。」と言う。

「ふっ。」俺は少女の手を引き、「いい場所あるよ。」ととある場所に連れて行く。


「ほら、ここ。」俺は少女を連れてラブホテルまで来た。

「えっ・・・。ここって。」少女は怯えながら続けて言う。

「私、したことないし無理です!怖いです。」俺は笑いながら「大丈夫、俺も初めてだから一緒に卒業しようよ。」

そう言いながら、前の客の見様見真似でタッチパネルを操作して部屋を取る。

部屋に入り、服を脱ぐと少女は俺にすがって「あの・・・挿れるのだけはナシでいいですか?やっぱり怖くて。」と言う。

俺は「分かった。じゃ、俺の彼女になってよ。ゆっくりでいいからさ。」と告白。

少女は震えながら「はい。」と頷く。

やった!ついに俺に彼女が出来た!今一度、青春をリアルJKとやり直そう。心の中で叫びながら肌を重ね合わせた。

柔らくてスベスベしてる。いいなぁ。みんなこんなことやってたんだろ。俺もついに幸せ手に入れたぜ。ざまぁ。


 ホテルを出た俺たちは解散。「またLINEするからね。」と言い残し、俺は帰った。今日会った駅は彼女の家の最寄り駅だそうだ。

彼女は駅から徒歩3分の団地に住んでいるという。親は共働きで夜まで帰ってこないらしいし、ヤるなら彼女の家でもいいか。

そんなことを考えては一人、ニヤニヤしながら今日の行為を思い出しながら眠りについた。

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