第6話 最初の異世界へ

 夜中の夢やら昔の友人やらがありいろいろあったけど、俺はわりかし元気だよ。結局朝まで眠れず酒をヤケ飲みしたけどね。寝不足の影響で身体の具合が酷いがまあ大丈夫でしょ。


 昨日飲みまくって忘れかけていたが、今日は運命の日と言っても過言ではない。俺達は神官さんに連れられて、とある異世界扉の前まで来ている。俺の家については同居人というか同居鳥達が少しの間留守を守ってくれるようだ。


「これをつければ異世界の言葉を自動的に翻訳してくれるんだね」


「そうじゃ。これで言語についての心配は無かろう。この品物は高く付いたわい」


 ハイスペック翻訳機を俺達に手渡しながら、神官は話を続ける。


「この天界侵攻を企てていそうな異世界人の中で、最初はお主らでも苦労しないだろうな奴をチョイスしたぞ」


 これはありがたい。苦労しない奴判定された人には可哀想だけど。これでさっさと終わらせれば......


「そんなわけだ。諸君共、異世界人の情報は諸星隊長に渡しておいたから、異世界人の事は頼んだぞ。後、ついでにあっちの異世界に何か変化があったか調べてほしい」


 ん? あれあれ神官さん。ちょっとっていうかだいぶ話が違わないか?


「神官。異世界でモフモフハーレムチート野郎が天界に危害を加える前に叩き潰すのが今回の任務だったはずだが、なんで追加されてるんだ?」


 諸星の言うとうりだ。俺もいきなり異世界に行って、暴れている輩をぶっ飛ばしに行くものかと思ってた。今ならノリと勢いでぶっ潰せると思うがな。


「先輩。この人が神官さんですか? 僕達の誰よりも筋肉質な身体をしているような気がするんですが......」


 あっ!? くるとくんの言うとうり、確かによく見て見たら、なんだこの服の下に鎧を付けているかのような筋肉は!? 今の今まで気づかなかったわ。じゃなくて今大事な事は異世界の件だ。神官さんの筋肉は俺にとってはマジでどうでもいいこと。


 その初対面とのギャップが激しい筋肉ダルマの神官さんはというと、その巨体とは凄くギャップがあるようなおどげた顔をしつつ、ゆっくりと首を傾げていた。身体はゴリラのくせに顔はかわいいってもう、頭がおかしくなるぜ......。頭が痛い。


「うわぁぁぁーー! そうじゃない! そうじゃなーーい! 神官の鋼のような筋肉のことはマジでどうでもいいんだよ!」


 いつのまにか俺はほとんど発狂しながら叫んでいた。俺は無自覚レベルでおかしくなってたのかもしれない。みんなはというと、俺の豹変ぶりに半端引かれているようだった。俺はそんなことはお構いなしにこう続ける。


「神官さん! 俺は、いや俺達が聞きたいのは異世界の情勢を調査ってことです! 調査ってなんですか? 異世界人ぶっ飛ばして任務終了、役目終了でいいでしょ!」


 本当はこんな役割やりたくない。平和を守りたい気持ちは本当だが、面倒事は省きたくなる。なんだよ!? 調査って? 俺はもう働きたくないでござる。職務放棄を平気でしてやるでつかまするで候そうろう


「お前ってそんな感情的になるタイプだったけな? というかさ、本当に大丈夫か? 少し休んだほうがいいんじゃないか?」

「隊長の言う通りですよ。先輩は休んだほうがいいと思います。今日の先輩はだいぶ様子がおかしいですから」

「これは......覚醒しているのか? もしかして覚醒星夜ってやつなのか!」


 そうだ! 目をキラキラ輝かして言っている人間兵器まなかの言う通り、俺は覚醒したんだ! チート野郎の1人や2人、俺がギッタンギッタンのクリームにしてやるぜ! アハハハハ!


 あれ? くるとくんが2人......? というか急に視界が暗転して......


「おい、大変だ! 星夜が倒れたぞ! この匂いは......さては直前まで酒を飲んでいたなコイツ! くると休憩室まで運ぶの手伝ってくれ! 星歌は俺達に補助魔法を!」


「今日はそういう日なのね。私の存在感が無い日か......」


 何故か慌てていそうな諸星の声と、大分落ち込んでいそうなまなかの声が聞こえたあと、俺の意識は闇の奥深くに消えていった......


◇◇◇◇◇◇◇

次回に続く

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