07
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昨日に引き続き、先行書類の出来上がったことを電話すると、またしても紅林さんが取りに来た。
大島さん、どうしたんだろう?
紅林さんはというと、相変わらずの無表情。
だけど会話をするときはきちんと目を見て話す。
真面目な人なのかなという印象。
意思の強そうな鋭い目付き。
決して睨んでいるわけではない、ただ凛とした、その目に吸い込まれてしまいそうだ。
書類を持って帰ろうとする紅林さんを、思わず呼び止める。
「あのっ、大島さんどうかしたんですか?」
私の言葉に、紅林さんはピクリと眉を動かした。
怪訝な表情にさえ見える。
あれ、これ聞いちゃいけなかったかな?
そう思って、慌てて言い訳のようなことを言って取り繕う。
「いえっ、いつも取りに来られるのが大島さんだったので、どうしたのかなーと思って。」
「…大島はインフルエンザで休んでいるんだ。」
「えっこの時季に?大変ですね。」
冬でもないのにまさかのインフルエンザ。
大島さん、どこで貰ってきたんだろ?
紅林さんは帰ろうとしていた体をしっかり私の方に戻すと、言った。
「だから今週は俺が取りに来るよ。」
マジですかー!
驚きと喜びがぶわっと押し寄せてきたけど、ここではしゃいだら変な子に思われてしまうのでぐっと我慢。
至って平静を装いつつ返事をする。
「わかりました。お待ちしてますね。」
平静を装ったつもりだったけど、完全に顔は嬉しさでいっぱいのニコニコ顔になっていたと思う。
そんな私に、紅林さんは少しだけ表情を緩めてくれる。
「ありがとう。」
いつもの電話越しの優しい口調で。
そう言って、図面管理課を出ていった。
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