03

受話器を置いてほうっとしていると、先輩の真知さんが「どうしたの?」と覗きこんできた。


「真知さん、紅林作業長って知ってます?声、素敵ですよね。」


「え?あー、まあ、確かに。」


真知さんは思い出すような仕草で同意してくれる。


「私、いつも聞き惚れてしまいます。」


「そう?でも、紅林作業長っていつも無愛想で取っ付きにくいよ。堅物エリート作業長って有名なんだけど、可憐ちゃん見たことない?」


真知さんの言葉に、私は首を傾げる。

連絡は紅林さんにするけど、書類を取りに来るのは部下の大島さんだ。

だから私は紅林さんを見たことがない。


それにしても、あんなに素敵な声なのに無愛想で取っ付きにくいとは?

堅物エリート作業長とは?

え、どんな?


妄想が爆発して余計気になっちゃうよ。


だけどやっぱり今日も部下の大島さんが書類を取りに来た。

むむむ、紅林さん、さては秘蔵っ子だな。

…なわけないよね。

落ち着け私の妄想力。

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