第58話一八二七年、砂糖大根と税制

「殿様、蝦夷から伝書鳩が届きました」


「うむ、読ませてもらおうか」


 俺の通信網整備は着々と進んだ。

 手旗信号を加えて進化させた旗振り通信は、日本中の商人の協力によって、津々浦々に広まっていた。

 日本中の商人が、情報伝達の遅れによる利益喪失や損害を嫌って、俺の政策に協力してくれた。


 まあ、北前船などの交易利益は、日本の中での商品価格差を利用しているので、相場の基本となる大阪の情報が逸早く日本中に伝わる事は、交易を松前藩の財源の柱にしている俺には、不利益なのは間違いない。


 だがそんな不利益などよりも、軍事上の情報伝達速度を優先しなければいけない。

 特に俺が江戸に定府しなければいけない状態では、戦地の情報を逸早く知り、適切な命令を下せるかどうかに、家臣領民の命がかかっているのだ。

 少々の金銭的な損失は、他で補えばいい。


 蝦夷からの情報では、長崎の出島や東南アジア、清国から手に入れた作物が順調に育っていた。

 特に期待しているのが、砂糖を収穫できる砂糖大根だった。

 蝦夷樺太で大々的に砂糖を収穫できるようになれば、二期作が可能な琉球や多禰国での砂糖黍栽培を止めて、稲作に切り替えることが可能だ。


 適材適所ではないが、琉球や多禰国で多くの米を収穫してそれを蝦夷樺太の食糧に回し、今はまだ稲作が厳しい蝦夷樺太では高値で売れる砂糖を作る。

 そうすれば日本全体の食糧生産力を高められると思う。

 あくまでも俺の想像でしかないが、薩摩藩の悪政で塗炭の苦しみを味わっていた、琉球と多禰国の民に十分な食事ができる生活を保障したい。


 ジャガイモと蕎麦とライ麦の育成も成功し、ジャガイモと蕎麦とライ麦から蒸留酒を生産する事にも成功している。

 いや、全ての穀物から蒸留酒の生産に成功していた。


 ジャガイモを原料にした酒、アクアビットとウォッカ。

 ライ麦を材料にした酒、コルンとクワス。

 大麦を材料にした酒、麦焼酎とビール。

 高粱を材料にした酒、白酒。

 小麦を材料にした酒、ビールとボザ。

 大切な主食、米を使わない酒をを生産し、あわよくば商品にしようとしていた。


 反別の年貢も、これを基準に一反の年貢を決めることができる。

 幕府の基準ではなく、松前藩の基準で年貢を決めることができる。


 「幕府年貢基準:一反(三百坪)」

上田 :一石五斗

中田 :一石三斗

下田 :一石一斗

下下田:九斗

上畠 :一石二斗

中畠 :一石

下畠 :八斗

下下畠:六斗

 「松前藩年貢基準:一反(三百坪)」

自作農は米ではなく収穫した穀物の四割を税として納める。

小作農は米ではなく収穫した穀物の七割を税として納める

自作農は蒸留酒にした分の四割を税として納める。

小作農は蒸留酒にした分の七割を税として納める。

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