白鷺が悲しみを持っていった。

白鷺(しらさぎ)が悲しみを持っていった。



白鷺が地上の悲しみを、一つ一つ丁寧に銜えて、


大空へ羽ばたいて行った。


そして、地上から、悲しみが無くなった。

悲しみの無くなった地上は、楽園となった。


時が流れ、人々は自らの心に、


何かが足りない事に気づき始めた。


もちろん、それが悲しみである事を、誰もが知っていた。


でも、誰も白鷺から、


悲しみ取り返そうなどとは、しなかった。


誰も好き好んで、嘆き悲しみたい人などいやしない。


人々は、川辺で佇む白鷺を、ただじっと見つめていた。



おしまし

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