(3)
「ねぇ、これ、俺にそんなに似てます?」
矢野が滋賀から呼び寄せた井上と云う医大講師は、自分そっくりな「死体」の画像を見ながら、そう言った。
2ヶ月前に飛騨に出没した……女性型の鬼を「調伏」した所、矢野の知人(なお、こっちは男性)にそっくりな死体に変貌したのだ。
「DNAは一致しましたけど」
「一致しました、って調べた方法は?」
それから交された専門用語が飛び交う会話について、傍で聞いていたソン・佐藤・小林・須藤が理解出来た事は……その井上と云う男が「その死体のDNAが自分のDNAと一致した」と云う事実を最終的に納得した事だけだった。
「お医者さんって、DNA検査の知識が、あんなにも有るのか……」
ソンがそう呟くと……。
「いや、俺、勤め先は医大ですけど、元々は理学部の生物の出身です」
「じゃあ、矢野さんとは大学が一緒だったんですか?」
「違います」
「じゃあ、学会で知り合った?」
「それも違います」
「じゃあ、どう云うお知り合いで?」
「若い頃にSF大会で……」
矢野と井上は同時に答えた。
「で、頼んでたモノは撮ってきてもらえました」
「ええ」
そう言って井上は自分の頭部のレントゲン写真を出した。
続いて、矢野はPCを操作して、井上そっくりの死体の頭部のレントゲン写真を表示した。
「まさかと思いますが……裏焼きしたなんて馬鹿なオチは無いですよね」
「今時、レントゲンだってフィルムじゃなくてCCDですよ。それに、左右逆転させたって一致しませんよ」
どちらのレントゲン写真にも、歯に治療の
「あと、この死体には盲腸有りました? 俺、若い頃に取ったんですけど」
「判んない。レントゲンとCTは撮れたけど、MRIにかけるのは問題が有ったんで」
「えっ?」
「右足の骨に骨折の治療の為の金属製のボルトが入ってた。なので磁気を使うMRIにはかけられない」
「いや、俺、そんな骨折も治療も……」
「やった事無い?」
「ええ」
「本当に、養子に行ったりした双子の兄弟とか居ません?」
「いや……それが……親が死んじゃったんで……もし、そんな事が有ったんなら、俺に聞くより戸籍とか出生届を調べた方が早いです」
「えっ? そうでしたっけ? いつ?」
「去年、鬼類災害で……結局『鬼』の撃退に失敗したんで、実家の辺りは今でも立ち入り禁止区域です」
「ええっと、実家って確か……」
「岡山県のT市です」
「ああ……戦前の大量殺人事件で有名な……」
「あの……せめてオ○○リ○ョーの出身地と言って下さい……」
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