第836話 お辞儀地蔵
高速道路から降りたすぐ近くに、狭い下り坂があった
その下り坂には、お地蔵様が何体も建てられていた
普通であれば、何も無い道なのだが、そこを一人で通るとある事が見れるらしい
まず、高速道路の近くという事で人が歩くことはほぼ無い
しかし、どういうわけか一人で歩いた人が居た
その人が体験した事だ
その日、ドライブをしていたカップルがいた
しかし、車内で喧嘩し、トイレだけがあるサービスエリアで女性は降ろされた
幸い、近くには高速道路の出口があり、その先には狭い下り坂があった
女性は、怒りのあまり男性より先に高速道路を出た
下り坂を歩いていると、お地蔵様が見える
すると、お地蔵様の一体が地震も無いのにぐらりと道の方へ倒れそうになった
しかし、倒れる直前にピタリと止まる。まるで、お辞儀をするように
「び、びっくりした……お辞儀のつもりかな?」
女性がそう言うと、別の地蔵が「そうです」と言わんばかりに、同じ様に倒れ掛かってはピタリと止まった
そして、男性の車が女性に追いついてきた
女性は、「やっぱり、思い直したのか」と思って手を挙げたが、男性はそのまま女性を無視して進んでいった
すると、地蔵の一体の顔が怒りの顔に代わり、ぐらりと倒れ掛かる
それからも、何体もぐらりと道を狭めるように倒れてきた
さずがに、不気味に思った女性は、坂の下まで一気に走り抜けた
走り抜けた先は、T字路になっていて、車はどっちへ行ったか分からない
女性は、普通の道まで出るとタクシーで家へ帰った
しかし、男性とはその日以降、合う事は無かった
神隠しにあったかのように忽然と消えてしまった
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