第775話 夜釣り

初めて夜釣りに出かけた


一人では寂しいので、ラジオでもつけながら釣ることにする


しばらくすると、糸を引っ張る感触がした


「お、きたきた!」


リールを巻いて持ち上げると……


「なんだ、靴か……。いや、エサに食いつかない靴を釣れるなんて、ある意味運がいいのか?」


と、よく分からない自己弁護をする。靴は高級そうだったが、靴を持って帰っても仕方ないので、誰も見ていないのを確認して海に投げ捨てた


すると、さっきまで音楽が流れていたラジオからニュースが流れた


「数日前行方不明になった男性が……。 中略 最後に、服装は……と、高級革靴を……」


ニュースで言っている靴は、さっき釣れた靴の様な気がした


「まさかね……」


引き続き釣りを続けると、大きく糸を引っ張るものがある


「大物だ!」


リールを巻くが、かなりの大物なのか、ひく力が強い。そして……


「続報です。さきほど行方不明の男性が、〇〇海岸で浮かんでいるのを……」


「〇〇海岸ってここじゃないか……」


ものすごく嫌な予感がして、リールを巻く手を緩める。しかし、食いついたものは逃げる様子もなく、糸を引き続ける


「なんかやばい!」


そう思って、悪いことだとは分かっているが、糸を切って逃げかえった


よく考えると、あの時間帯にニュースが流れるわけがなかった


そして、翌日、釣り糸に絡まった遺体が見つかったらしい

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