第718話 うつぶせ
私がパートで働いてると、携帯電話が鳴った。かけてきたのは、娘を預けている保育所からだった
「はい。〇〇です」
「あ、〇〇ちゃんのお母さんですか? 今すぐ、娘さんを迎えに来て貰えませんか?」
「え? 何かあったんですか?」
「娘さんが起きないので。すぐに迎えに来てください」
女性はそれだけ言うと、電話を切った。起きないとはどういう事なのか。昼寝から起きないだけで、電話をかけてくるのだろうか
私は、混乱したまま、上司に早退を告げて会社を後にする
保育所までは、車で10分くらいかかる。その間、不安でいっぱいだった
車のキーすらそのままにして、保育所の入口へ走る
「〇〇です。娘に何がありましたか?!」
入るなり、すぐに声をかける。すでに待っていたのか、部屋から女性がでてきた
女性の腕の中には、私の娘が眠っている。その寝顔を見て、一瞬ほっとしたけれど、用件は娘が起きない事だったはずだ
私は、娘を抱っこして受け取ると、娘のおでこに頬を付ける。すると、娘が冷たいと感じた
それに、娘の呼吸が無い気がする。少し乱暴ではあったけれど、しゃがんで娘を膝上において首を触ったけれど、脈拍を感じることは出来なかった
保育所が言うには、気がついたら娘はうつぶせになって寝ていたという事で、仰向けに直したけれど、時間になって起こしても起きなかったので、電話したとのことだった
娘の死がきっかけで、その保育所が無届であったことが分かったが、もう後悔しても取り返しがつかない
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