第716話 2人の子供
天気が良かったので、小学1年生の息子を公園へ連れて行ったときの事だ
自分が住んでいる地域には、近くにいくつか公園があるが、小さな公園ばかりなのであまり子供が遊んでいる姿を見たことが無い
いつも行く公園には、ちょっとした小山と屋根のある休憩場所くらいしかない
そこで、散歩がてらに、いつもより少し遠い公園へと連れていく事にした
息子は嬉しそうに、自分と手をつなぎながら歩く。ついた公演は、中心が芝生で、周りには盛り上がった場所があり、そこに休憩所があった。また、蛇口もあるので手を洗う事もできそうだ
芝生では、息子と同じくらいの女の子が2人遊んでいた
「同じ学校の子か?」
年が近そうだったので、そう息子に尋ねるが、返事は「知らない子達」という事だった
息子と同じくらいの身長でも、一個上か一個下なのかもしれない。息子が、同級生に興味が無くて覚えてないだけかもしれないが
息子は最初、盛り上がった場所を登ったり、降りたりして遊んでいた。すると、いつの間にか女の子2人が息子の近くに来ていた
「「一緒に遊ぼう!」」
「うん、いいよ」
息子と女の子は、追いかけっこをして走り回って遊んでいた
しばらくして、帰ろうと思い息子を呼ぶ
「そろそろ帰ろうか」
「わかったー。じゃあねー、ばいばい」
息子は、素直に自分の元へ来て、女の子たちにバイバイをする
しかし、女の子たちは
「もっと遊ぼう」
と言って、息子の後ろを付いてきた。息子が知らないという女の子たちなので、
「もう少ししたら暗くなるから、帰った方がいいよ」
と、やんわりと帰宅を促しましたが
「大丈夫」
と言って後ろを付いてきます
「おうちはこの辺?」
「うん」
「小学生?」
「うん」
何を聞いても、「うん」か「ううん」としか答えてくれません。女の子は、遠慮なしに息子にべたべたと触れ始めました
息子は、嫌がって
「もう帰って!」
と言いますが、平気な顔で付いてきます。さすがに、家に着いたら帰るだろうと思い、家に着いた段階で
「僕たちはこれで帰るから、お家へお帰り」
と言ったのですが、女の子たちは
「まだ遊びたい」「喉が渇いたからジュースが欲しい」「お菓子が食べたい」
とわがままを言い始めました。そこへ、ちょうど家に帰って来た妻が
「あら、お友達? じゃあ、ジュースを入れてあげるからお入り」
と言ってしまいました。妻は事情を知らないため、息子の友達だと思ったみたいです
それを聞いた女の子たちは、遠慮なく家に突撃し、テーブルに陣取りました
息子と女の子2人に、お菓子とジュースが出されました。その間に、妻に事情を話しました
「それを飲んだら帰ろうね」
妻はそう言ったのですが
「ジュースおかわり」「クッキーもおかわり」
と、遠慮のない催促がきました。子供だからしょうがないと、おかわりを出してあげましたが、息子が
「もう帰って!」
と叫ぶので、少し強硬手段に出ることにしました
「ほら、息子もそう言っているから、もう帰って」
と、女の子たちを捕まえて玄関まで連れ出そうとしましたが、すばしっこく逃げる上に、下手に触れて怪我をさせるのも怖かったので、捕まえることが出来ませんでした
そうしているうちに、息子が大泣きしはじめると、女の子たちはやっと玄関に走っていって外へと出ていきました
それから、あの女の子は誰だったのか、何回かあの公園へ見に行きましたが、あれ以来二度と見かけることはありませんでした
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