第698話 事故に遭ったのは?
私の妻は、私にいつも尽くしてくれます
仕事が終わって家に帰ると、きちんと食事や風呂が用意してあります
ある日、家に帰る前にふとある物が食べたくなり、妻に電話しました
「すまないが、コンビニでシュークリームを買ってきてくれないか」
あいにく、私は電車通いで、帰り道にコンビニはありません。家の反対側に200mほど行った場所にコンビニはありました
「いいわよ。食事の準備が終わってからね」
「ありがとう。じゃあ、またあとで」
そう言って電話を切った数分後、私は電車に乗って家に帰りました
20分ほどで家に帰った私は、玄関のドアを開けようとしましたが、鍵がかかっていました
「おや? まだ帰ってきていないのか。レジが混んでいたのかな」
コンビニまで数分あれば着くはずですし、レジが混んでいても数十分もかからないと思います
私はもうすぐ帰ってくるだろうと思い、作ってあった料理を皿に盛って待つことにしました
一応、電話をかけてみましたが電源が入っていないらしく繋がりませんでした
さらに十分ほど待った後、さすがに遅いと思いコンビニへ向かう事にしました
コンビニに着くと、そこには警察や消防士が居て、慌ただしく作業していました
見ると、コンビニのガラスが割れ、そこに車が突っ込んでいる様でした
店内を覗くと、車の付近の床は多量の血で濡れていました
「まさか……」
嫌な予感がして、作業が終わるのを待っているコンビニの店員に話しかけました
「事故ですか? 誰かけが人とかは居るんですか?」
「ええ、ついさっき車が突っ込んできて、運悪くデザート売り場に立っていた女性が車に挟まれて……私はすぐに救急車を呼んだんですけど、ピクリとも動いていなかったから……」
そこで店員は言葉を濁しましたが、おそらく意識不明か、死亡していたと言う事でしょう
私はもう一度妻に電話をかけましたが、繋がりません
ここにずっといても仕方が無いので、家に帰りました。鍵をとりだし、ドアに差し込みましたが、手ごたえが無く開いている様でした
「た、ただいま……?」
「おかえりなさい。遅かったのね。料理は冷めてしまったから温めなおすわ」
家に居たのは妻でした。いつも通りの様子に、私は安心しました
「電話が繋がらなかったけど、どうしたんだ?」
「あら、ごめんなさい。コンビニに行ったときに電話を貸してほしいっていう女性に貸したのよ」
「返してもらわなかったのか?」
「その直後に、コンビニに車が突っ込んできたのよ」
「……お前に何も無くてよかった……ほんとうによかった……」
その夜中に、私の携帯が鳴った。知らない番号からでしたが、固定電話からだったので出ることにしました
「はい、もしもし?」
「あ、〇〇さんですか? あなたの奥さんと思われる方が事故に遭われて……」
「え? 妻は今、一緒に居ますよ?」
「でも、携帯にあった夫と登録してある電話にかけたのですが」
「その携帯は妻の物でしょう。妻はコンビニにいた方に貸したらしく……」
電話は病院からで、妻の携帯から連絡がつきそうな所へかけたと言う事でした
結局、事故に遭われた方が誰だったのかは分からず仕舞いでしたが、妻が無事ならそれでいいと思いました
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