第498話 片思い

中学生の頃、帰り道に好きな子の後をつけた




今の年でやったらストーカーと言われるかもしれないが、当時は純粋な気持ちだったからセーフのはずだ




その子はクラスで一番かわいいという訳ではなく、真ん中くらいの普通だった




彼女の家は貧乏なのか、鉛筆は最後の最後まで使うし、消しゴムだって無駄にしないように書き間違いすら気を付けていた




さすがに体操服や制服は新品なのだろうが、夏の間みたかぎりでは靴下やシャツから見える下着は新品ではないようだった




だから俺は少しでも助けになりたくて、その子の家に何かできないかと思い、つけているのだ




彼女は一軒の家に入っていった。そこは市営の平屋で、家賃は安いと思われる場所だった




誰も居ないのか、鍵を開けて中に入り、すぐに鍵を閉めた




俺は中を少しでも見れないかと思い、窓による




すると、ちょうどカーテンに穴が開いていて、その隙間から覗いた




ちょうど家に入った彼女が見えた。彼女は制服のまま一直線に押し入れに向かった




もし、着替えるならさすがに覗くのをやめようと思ったが、押し入れを開けてすぐ出てきたのは




女性の生首だった。それも干からびて骨まで見えている




「ひっ」




俺は驚いて尻もちをつく。その音に気が付いたのか、彼女が窓の方に走っていた




慌てて陰に隠れるのと、カーテンが開かれるのは同時だった




こわくて見れなかったが、再びカーテンが閉まるシャッという音がしたのでホッとしていたが




代わりに玄関の扉が開く音がした。俺は慌ててさらに奥へと隠れた。そこは人が隠れれるくらいの草が生えていて、少しだけ隙間から彼女が見えた




彼女はさっきの窓の位置に来ると、しばらくきょろきょろと辺りを伺う




「ちっ、逃げられた……」




彼女はそう呟いて家へと入っていった




俺の心臓はバクバクと破裂しそうなほど高鳴り、呼吸は荒くなった




この高鳴りは決して恋ではなく、命の危険を感じたものだろう




俺は何も見なかった事にすると決心し、家へ帰った




次の日、彼女はめったに自分からクラスメイトに声を掛けないが、その日は朝から一人一人に声を掛けていた




ほとんど話したことのないクラスメイトは、ぎこちなく相手をしていた




俺にはそれが尋問に見え、できる限り彼女に近づかないようにしていた




そして、放課後。無事彼女に見つからず帰る事が出来そうだった




玄関で靴を履き替えていると、後ろから声がかけられた




「ねえ、ちょっといいかしら?」




彼女だった。俺は一気に跳ね上がる心臓を押さえるようにして振り向く




「な、なに? 何か用?」




「ううん。もういいわ。さようなら」




そう言って彼女はその場から一歩も動かなくなった




俺は出来るだけ自然に見えるように靴を履き替え、玄関からでようとすると




「お前だったのか」




そう呟く声が聞こえた

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