第481話 助けてあげない

僕達は公園で遊んでいました




その公園には池があって、僕は泳げないからそこへは近寄らないようにしていました




けれども、僕が蹴ったサッカーボールが運悪くベンチに座っていた女の人に当たってしまいました




その女の人は、僕を睨むと、ボールを拾いました




「ごめんなさい。拾ってくれてありがとうございます」




僕はすぐに謝ったけれど、女の人は僕を睨むのを止めず、さらには後ろを向きました




どうするのかと思っていたら、池に向かってボールを投げました




「あっ!」




僕は驚いて声をあげたけれど、女の人は僕を無視してベンチに座りました




「おまえが蹴ったんだから、お前がとって来いよ!」




友達は僕に取りに行かせたいようです。確かに僕が蹴ったんだけど、池に入れたのは女の人なのに……




しかし、ボールを無くすとお母さんに怒られます。僕は泳げないから、長い棒でボールを引き寄せることにしました




幸い、棒が届く程度の距離だったのです




「おい、後ろ!」




友達が叫びました




いつの間にか、僕の後ろに女の人が立っていました




「な、なにか……」




僕がそう言いかけた時、女の人はドンッと僕を池に突き落としました




「た、助けて、泳げないんだ!」




「来世まで助けてあげない」




女の人はそう言ってベンチに戻っていきました




近くに居た友達が、僕の持っていた棒を差し出してくれたので、それに掴まって何とか岸に戻れました




女の人はすでにどこにも居なくなっていました




不思議なことに、サッカーボールも濡れていない状態で岸に置いてありました




僕は、怖くなってエーン、エーンと泣き続けました




友達もつられてエーン、エーンと泣きました




大人たちが事情を聞いてくれて、付近を探したようですが、女の人は見つかりませんでした




僕はもう、公園で遊ぶことができそうにありません

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