第468話 不幸の楽譜
こんにちは、山内花林です。
音楽の先生が、授業に某中古落札サイトで手に入れた楽譜を持ってきました
「これは、絶対に弾いてはならない楽譜だそうだ。俺もまだ中には見ていないが、弾いたやつには不幸が訪れるらしいぞ」
キャーッとクラスから悲鳴が上がる。先生は、それに気をよくしたのか、袋を開けて譜面を取り出しました
「ふーん、そんなに難しい曲じゃ無いな。弾いてみたいやつは居るか?」
当然、そんな怪しい楽譜を弾きたい人なんて居なかった。しかし、興味はあるようでどんな曲が流れるのかみんな期待した目で待っています
「じゃあ、弾くぞ」
先生が弾き始めると、とたんに辺りが暗く、陰鬱な感じになった気がした。聴いている生徒の何人かも、顔色を青くし始めました
「もう、止めた方がいいのではないですか」
クラスの一人が、先生に進言しました
「な、だめだ……手が止まらない!」
先生は既に楽譜を見ていないのに、手だけは動いています。私には先生の指を一本一本掴む青白い手が見えました
「先生を、ピアノから離さないと!」
私がとっさにそう言うと、クラスの男子の何人かが先生を引き離しに動きました
先生の手は、磁石の様にピアノにくっついたままだ。私は、譜面を見ないようにして楽譜を閉じました。すると、先生の手はあっさりと鍵盤から解放されました
「すまない……助かった」
いつの間に時間が経っていたのか、授業の終わりのチャイムが鳴りました
「今日は本当にすまなかった。この楽譜は燃やすことにするよ」
そう言って閉じた楽譜をしっかりと握り、先生は教室を出ていきました
次の日、音楽の先生が入院したとの知らせが来ました
原因は不明らしいのですが、家にいた先生の指が全て折られていたと聞きました
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