第442話 車のライト

ある空き地に車が止められていた




所有者はもう県外に行って長いらしいから、持ち主の車では無いだろう




路上駐車が嫌でここに止めているのか?




まあ、そのうち居なくなるだろう




そう思って散歩を続けた




散歩から帰ってくると、まだ車は止まっていた




まあ、30分ほどの散歩だったし、明日には居なくなるだろう




次の日に見ると、まだ車が止まっていた




昨日は無人だったが、今は人が居るのかライトが付いていた




別に土地の持ち主の知り合いでは無いが、何かあっては嫌なので声を掛けてみることにした




しかし、運転席には誰も乗っていなかった。じゃあ、後部座席はと言うと、後部座席にも誰も居なかった




ハイブリッド車なので、エンジン自体はかかっていなくてうるさくはない




ライトが付いているなら、そう遠くない場所に行っているのだろうか?




しかし、次の日も車は置きっぱなしだった。相変わらずライトはつけっぱなしだ




しばらく様子を見ているが、運て主が戻ってくる気配はない




ただ、その日の夜になっても戻って来なかった。そしてライトは相変わらずつけっぱなしだ




「あそこの空き地に車が止めてあるんだよ。それも、ライトをつけっぱなしで2日間も」




なんとなく、晩飯のネタに妻に話してみた




「あら、そうなの? その車、バッテリーは上がらないのかしら?」




そう言われて見ると、確かにライトをつけっぱなしで2日間も放置すれば、いくらハイブリッド車と言えどもバッテリーが上がるのではないか




そう思って、寝る前にもう一度だけ車を見に行った




すると、なにやら運転席に人が居るようだ




ああ、やっと居なくなるのか。そう思った時、ライトが消えた




ライトが急に消えたせいで、ただでさえ暗い空き地が、真っ暗になってしまった




自分の目もライトに当てられていたため、よく見えない




目を開けると、車が居なくなっていた




「ハイブリッド車だから、エンジン音が聞こえなかったのかな?」




次の日、なんとなく空き地を見に行った。車はもうない




しかし、よく見ると、雑草に止めていた4カ所以外のタイヤ痕が無かった




まるで、空から降りてきて、また飛んでいったかのように……

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