第273話 髪が伸びる人形

たまたまアンティークショップをのぞいた時の事、私の目には1体の人形に釘付けになった




その人形は、昔ながらの市松人形で、霊感のほとんどない私でも分かるくらいに妖気を放っている……気がする




「店長さん、これは?」




「これかい? これは、いつからあるのか分からないが、貴重な人形らしいよ」




店長ですら分からない人形が店頭に並んでいるのか? 一応他の物も見てみよう




そう思って他の棚を覗いていた時、視線を感じて振り向いた。すると、さっきまで真っすぐ前を見ていた人形が、私の方へ少し首を向けているような気がする




「何か気に入ったものはあるかい?」




店長が話しかけてきたのでそちらを向いた




「もう少し見せてもらってもいい?」




「どうぞ」




そして、視線を感じなくなったので人形を見ると、真っすぐ向いている。気のせいだったのか?




結局、他にめぼしいものはなく、何故か人形を買ってしまった




貴重な物って言っていた割に1万円でいいと言われた。それが高いのかどうかは私には判断がつかないが




しかし、私にも一種の予感と言うものがあったのは確かだ




家に持ち帰り、タンスの上に置く




次の日の朝、人形は何事もなくタンスの上に乗ったままだった




それから、2泊3日の旅行へ行っていた。まさか、家が火事になったりしていないよな? と思いつつ帰りの電車に乗っている




うん、家は無事のようだ




「ただいまー」




誰も居ないので返事は当然無い




そして、人形を見るとなんと、髪が伸びていた




「これは……」




やはり、私の予感は間違っていなかったようだ




それから1か月後、薄かった私の髪が増毛された


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る