第162話 鈴虫

リーン、リーン





夜、廊下を通ると、鈴虫の羽音がした





どこにいるのかと思って庭の草を見る





すると、音が止まった





そのままトイレに行ってから戻ると、また





リーン、リーンと音がする





「綺麗な音色だな」





そう思ってスマフォに録音しようと思ったが、鈴虫の音色は録音できないんだったか?





まあ、物はためしと録音する





5分くらいのんびりと音色を聞いていたが、ふいに音が止んだので、きりよく部屋へ戻った





部屋にいた家内に聞かせようと、音を再生する





「リーン、リーン」





まるで、低い男の声が棒読みしているような声が入っていた





「なによそれ、気持ち悪い」





家内はそう言ってテレビをつけたとき、画面に男の顔が映った





「りーーーん」





男の顔はそれだけ言うと、テレビの電源が切れた





おそるおそるもう一度テレビをつけるが、普通に番組が入った





「何だったのかしら?」





次の日、明るいうちに録音をもう一度聞いてみようと思ったが、そもそも録音データが無かった

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