第81話 貸家で
今日は、貸家の下見に来た
アパートから引っ越して、夫婦二人で静かに暮らせる場所を探している
田舎の、昔ながらの建物で、市が援助をしているため、5年間は家賃がかからない
「ねえ、あれは仏壇かしら?」
妻がそういうと、畳の一室に扉が見える
立会人は、鍵を開けると、お好きにどうぞと外で待っているため、ここにはいない
黒い扉を開けると、中は空洞だった
「何もないな」
俺はそういって扉を閉めると、どこかでふすまの開く音がした
「担当者の人も来たのかしら?」
妻はそういうが、玄関の開いた音はしなかったはずだ
俺たちは続いて奥の部屋に行くと、障子の後ろに誰かが立っているような気がした
「誰かいるのか?」
そういうと、影が動いた気がした
障子を開けると、奥に一本の木が見えた
もしかしたら、その影だったのかもしれない
2階へ行き、窓から景色を見る
左手は山が見え、右手は海が見える
「いい景色ね」
妻は気に入ったようだ
俺は、ふとさっきの庭の木を見ると、何かがぶら下がっているように見えた
「あれはなんだ?」
俺が指さすが、妻は「どれ?」と分からないようだ
気のせいかと思い、窓を閉めると、ドサリという音がした
「何の音だ?」
「え?何も聞こえなかったわよ?」
それから数年、俺たちはこの家で暮らしている
ただ、庭の木にぶら下がっている首つり死体は俺にしか見えないらしい
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます