第35話 蛍を

こんにちは、山内花林です。




近所の林に行った時の事です




夏ということで、蛍を探しに行きました




夜になるとほぼ真っ暗になるので、ちょっとした光でも探しやすいところです




幸いにも、小川は家の近くにあり、万が一なにかあればすぐに民家に逃げ込める場所にあります




民家から20mくらい林に入ったところで、黄色の光が見えました




光は一つだけで、点いたり消えたりを繰り返しています




その光に誘われるように近づいて行ったのですが、真っ暗なために距離感がつかめなくてどこにいるのかよくわかりません




何m歩いたかわかりませんが、光に向かって歩いていくうちに、かさっかさっと足音がします




その音は、光のほうからでした




息を殺して木の陰から光を見ると、それは懐中電灯の光だったようです




ちょうど、背の低い木や、木の間を通っていたためについたり消えたりしているように見えていたようです




人の事は言えないのですが、こんな時間に何をしているのだろうと興味を持ちました




その人は、懐中電灯を落としたようで、一瞬光が消えました




その人は、懐中電灯を拾おうとしたのだと思います




ちょうど木の陰で見えない位置だったので、かがんだ姿は見えませんでした




足音はしないので、移動はしていないはずです




私もできるだけ足音を立てないようにしますが、少しは音がしてしまいます




「何をしているんだ?」




後ろから急に声をかけられてびっくりしました




振り返ると、父親でした




私は、さっきの光の事を伝えると、一緒に見に行くことにしました




懐中電灯を落としたであろう場所まで行くと、懐中電灯が落ちていました




しかし、その懐中電灯はもう何年も放置されていたようにさびていて、スイッチを押しても点きませんでした




拾うのも気持ち悪かったので、そのまま放置して帰ることにしました




そして、夜布団の中で、ふと思ったのです




なんで父親の足音はしなかったのだろう?




父親に聞くのが怖いです


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