第169話 4日目?-2
メ「行ったかの?」
レ「うわっ!」
急にしゃべりだした人形にびっくりする。さっきまでの機械的なしゃべりとは全然違う、メィルのしゃべり方だ。
メ「擬似的な魂を入れてある。だからこそのリンクだからの。」
人形は、しゃべれはするが動けないようで、手と首が少し動く程度の様だ。
メ「やれやれ。もう少し時間があれば動けるようにしたかったのだが、まあ、動けなくても問題は無いがの。」
レ「それだけ流ちょうに話せるなら、さっきのは何だったんだよ!」
メ「零達に人形が届くようにしたかっただけだがの。恐らくではあるが、私がこういう人形だと分かれば、お主たちに渡った確率が低いと言わざるを得ないからの。」
レ「それで、わざわざ人形を寄越した理由は何だ? 私の代わりに大事にしてくれとか言うわけでもないだろ?」
それはそれで一瞬、ありかもしれないと思ったが、それならば本当にただの人形でいいはずだ。それも、食堂などではなくこの部屋に置いて行くだろう。やはり、一番の目的は本体の発見なのだろう。
メ「まあ、急かすでない。と言っても、時間が無いのも確かだの。まず、私のお腹の中を探ってくれぬか。人形の手では取りだせぬのでな。」
言われて腹のあたりを見ると、切れ目を縫い合わせた様な場所がある。
レ「この糸を切ればいいのか?」
メ「そうだの。そして、中にある物をとりだして欲しいのだ。」
俺は分裂体でハサミを作ると、糸を切る。そして、綿のお腹を探ると、ビー玉くらいの大きさの丸い球が手に触れる。それをそっとつまんで取り出す。
レ「これは?」
黒いコア。通常のモンスターはモンスターの種類によって色はさまざまだが、大抵本体と似通った色になっている。だが、悪魔だけは必ず黒かった。だから、これは悪魔のコアでは無いだろうか。
メ「それはドラゴンの星に居たベリアスという悪魔のコアだの。それを見つけたので、慌ててこの人形を作ったというのが正しいかの。それで、私を救いたい気持ちはあるかの?」
レ「助けたいに決まっているだろ!」
俺はメィルを連れ去られた悔しさを思い出し、憤りを覚える。弥生もぎゅっと手を握り込んで悔しさをにじませている。
メ「それならば、そのコアを使え。ここから先は、ただの人間が踏み込める領域では無いからの。しかし、ただ使えば、おそらく肉体が耐えられぬであろう。そこで、裏技ではあるが、そのコアをこの人形にもう一度埋め込み、4人同時で倒せ。」
一瞬、メィルの言葉が分からなかった。自分の分身を倒せ? それって、俺達にメィルを倒せと言っているのか?
レ「……できない。」
メ「できないではない。やるしかないのだ。このために、私は自分が使わぬであろうスキルをこの人形に託した。各々、必要なスキルを得ることになるであろう。さあ、時間が無いのだ。」
メィルの人形は動けないなりに手で催促する。不格好な人形ではあるが、俺はすでにメィルにしか見えない。
ヤ「メィルちゃんの人形じゃやりにくいですよね? 私が、姿だけでも変えて上げます。変化。」
弥生はメィルの人形に触れると、ただの的になった。弓道とかで矢を当てるあれだ。いくらなんでも可哀想じゃないか?
メ「弥生、助かる。これで心置きなく倒すがよい。」
口は無いのにどこからかしゃべる的。弥生は既に決心したのか、クナイを構える。それに呼応してアヌビスが杖を構え、イルナも冥府の鎌を構える。
ヤ「源さん……。」
弥生は俺を呼ぶが、それ以上急かすような言葉を語ることはなかった。アヌビスも、イルナもじっと待ってくれる。俺の脳裏には様々な思い出が次から次へと湧いてくるが、最後に「私を救って、お兄ちゃん」と最初にあった頃のメィルが浮かんだことで決心がついた。俺も刀を構える。
レ「待たせたな。いくぞ!」
俺達は、同時に的を攻撃した。そこからは、異常な力の奔流に、4人とも立っていられなくなりうずくまる。
ニ「みんな、大丈夫?」
ニーナは心配そうに俺達を見ているが、これはダメージではなくパワーアップだ。しばらくして、俺達は自分のステータスをみて驚く。そう、俺も鑑定を使えるようになっていたのだ。
アヌビス(神):HP500万、MP455万、攻撃力15万、防御力50万、素早さ78万、魔力120万、スキル:魔法耐性(80%カット)、闇魔法(10)、HP自動回復(極)、MP自動回復(極)、空間魔法(5)、転移魔法、鑑定、蘇生、千里眼、飛行、透過、透明化、火魔法(8)、水魔法(8)、木魔法(8)、土魔法(8)、魔力補正(中)、装備:神杖・魔力50万、聖なる衣・防御力40万
まず、アヌビスは女神ランクⅣほどのステータスになっていた。そのステータスに応じて神装備のパワーも上がっている。新しいスキルも増えたようだ。こちらに来た時は女神ランクⅤくらいだったのに。さらに言えば、ほんとうに最初の時は女神ランクⅤのワルキューレより弱かったんだがな。
イルナ(見習い女神):HP1000万、MP1000万、攻撃力2万、防御力10万、素早さ100万、魔力100万、スキル:???、装備:冥府の鎌・攻撃力1万、カラミティメイド服・防御力10万、死者の杖、死者の衣
イルナは人間の枠を超えて見習い女神へと昇神していた。さらに、ベリアスのスキルのほとんどをイルナが得たような格好になっている。また、ベリアスが使っていた神の服が、イルナを使用者と認めたようで、メイド服として装備されている。元々着ていたメイド服は、その過程で粉々になった。
形無弥生(亜神):HP300万、MP500万、攻撃力300万+90万、防御力100万、素早さ250万+225万、魔力100万、スキル:変化、投擲術(10)、空間魔法(8)、HP自動回復(中)、MP自動回復(大)、攻撃補正(中)、透明化、転移、蘇生、千里眼、飛行、鑑定、時空魔法、装備:災厄のクナイ・攻撃力10万、スラ手裏剣・攻撃力250、忍者服・防御力5
弥生も人間の枠を超え、亜神となっていた。やはり、人間の肉体ではこの力に耐えられないのだろう。イルナと違って女神になる試験に参加していなかったため、女神には至らなかったようだ。スキルは増えたが、スキルランクは上がっておらず、やはりメインスキルはイルナの方へ行ったのだろう。そして、ベリアスが使っていた扇子が、弥生を使用者と認めたようで、俺の与えたクナイを破壊し、クナイに変化した。ついでに、スラマフラーも破壊された。神装備って前の装備壊さないと気が済まないの?
源零(亜神):HP700万、MP500万、攻撃力50万、防御力200万、素早さ100万、魔力100万、スキル:分裂、HP自動回復(中)、MP自動回復(大)、融合、空間魔法(4)、転移、蘇生、千里眼、鑑定、コアからスキルの吸収、装備:スラタン(刀)・攻撃力500、スラコート・防御力400、スーツ・防御力(0)
俺も人間の枠を超え、亜神となったようだ。正直、思ったより変化がない。ステータスは跳ね上がったが、それだけだ。ただ、メィルのスキルだった「コアからスキルの吸収」がある。まるで、メィルからの形見の様だ。いや、まだメィルは捕まっているだけだ。早く助けに行かないと!
レ「よし、全員転移は出来るな? ラヴィ様達に合流しよう。ダンジョンのフロントへ転移!」
しかし、転移しない。初めて使うスキルに、何か座標指定しなきゃならないとか、スキルを得てから行ったことがある場所だけとか、制限があるのか?
ヤ「あの、源さん。ビジネスホテル内では結界が張ってあるので転移出来ませんよ?」
そうだった……。俺は恥ずかしさのあまり穴があったら入りたい。知らずにテンションが上がりすぎ、うかつな事をしてしまった。俺達は急いでビジネスホテルの外へ出ると、ダンジョン内へ転移した。
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